なぜ“イケ婿”は登場したのか? 最新の結婚事情に迫るこれからのことがよく分かるコラム(4/5 ページ)

» 2012年05月09日 08時02分 公開
[伊藤綾,Business Media 誠]

2010年代は「アットハート婚」

 下のグラフを見てほしい。結婚式を挙げた理由として、2006年頃から家族や招待客に感謝を伝えたかった、という回答が次第に高まっていることが分かる。2010年代に入った今、アットホームであることは、どんなタイプの会場であってももはや“当たり前品質”となり、結婚式は一歩進んで「気持ちを伝える場」へと変化している。私はこれを「アットホーム(=場)婚」と比較して「アットハート(=心)婚」と呼んでいる。「つながり婚」ともいえるだろう。

披露宴・披露パーティをあげた理由の推移グラフ(ゼクシィ結婚トレンド調査2011・首都圏)

 上のグラフは「親への感謝が1位なのですか?」と驚かれることが多いのだが、実際、「新郎新婦の家族の登場」は今の結婚式には欠かせないものとなっている。例えば、実施率が急上昇しているのが「ベールダウン」(2010年調査:25.8%→2011年:41.4%)という演出。挙式の入場時、母親に両手でベールをおろしてもらうもので、ほんの一瞬のことなのだが涙する花嫁も多い。お色直し退場のエスコート役にサプライズで祖父母や兄弟姉妹を指名する、新郎新婦と両家の親で3つのケーキをカットする演出も定番化した。2000年代までは末席に目立たぬように座っていた家族たちが、和気あいあいと、ナチュラルに、招待客の前に進み出るようになった。

 両家の親を大切にし、彼らへの感謝を素直に伝える新郎新婦。それは自分たちが将来どんな家庭を作りたいかというメッセージにもつながっている。招待客は挙式、プロフィール映像、最後の新郎謝辞などいくつかの場面でそんな「家族への気持ち」を目撃し、面白いことに、それが「いい結婚式だった」と会場全体に一体感を生み出す要因にもなっている。

 「家族」は招待客にとって自身に重ねやすい普遍的なテーマだからなのかもしれない。ゲストハウスが増加した2000年代、今後の結婚式はガーデンでダンスをしたり、おしゃべりしたりといった欧米のようなスタイルになるのではとも言われたが、日本の人々にフィットする“一体感”とは、ダンスよりも「家族っていいね」という共感のほうなのだろう。

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