では、マネジメントに矢印を向けると「一体何が問題なのでしょう?」と言って、往々にして返ってくる答えは、「人材育成の計画がない」「人材育成の仕組みがない」「人材育成プロセスが機能していない」「教育プログラムが良くない」「人事評価制度が現状と合ってない」などなのですが、これは本当にそうなのでしょうか? 逆にこれらの制度や仕組があれば、人は育つのでしょうか?
私の考えは否です。
なぜなら、我々が心の底から育てたいと願っているのは、プロジェクトマネジメントのスキルがあり、上流工程の設計もこなせる、というような固定化された能力を持つ人材ではなく、自分が成長するために何が必要か自分で考え、そして自ら学んでいく、そういう自ら成長していく人間だからです。
中長期の目標から数年後の組織に必要なスキルごとの人員構成を描き、スキル診断や360度評価を実施、組織のキャリアパスを用意し、目標と現状の人員構成のギャップから教育計画を立案、教育プログラムを用意し、人材育成のPDCAのサイクルをきちんと回してさえいれば自動的に人が育つと考えるマネジャーは、立派な筆や上等な絵の具を用意すれば優れた芸術作品を生み出せると考えている画家のようなものです。画材にいくらお金をかけたところで優れた絵画は描けないように、制度や仕組みをいくら整備したところで優れた人間を育てることはできないのです。
我々が本当に求めているのは、組織が用意したキャリアパスや教育プログラムなんか無くても、自ら道を切り開き成長し、やがては我々マネジャーを超えていく、そんな人間ではないでしょうか?
もしそうでなければ、組織は世代交代とともに衰退していくしかありませんし、今現実に衰退は始まっているのかもしれません。
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