株価が下がってもリニアを貫く、JR東海の事情杉山淳一の時事日想(3/4 ページ)

» 2012年04月27日 08時01分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

 さらに、東海道新幹線開業後の1970年代に「東海大地震」の可能性が予見された。そこで東海道新幹線も耐震工事が実施された。しかし、予測規模が不明な上、発生すればダメージがまったくないとは言えない。JR東海にとってドル箱の東名阪はルートを二重化したい。リニア中央新幹線の工期を10年とするならば、いますぐにでも取り掛かりたい。整備新幹線計画に付き物の「国と地方自治体の駆け引き」を待ってはいられない。

 付け加えるならば、世界的な高速鉄道需要に向けて、長距離リニア新幹線の運用実績を作りたいという理由もあるだろう。日本が世界各国に新幹線を売り込む大きなメリットが「現在まで乗客の死傷者を出していない」という実績である。また、新幹線は在来線とは独立した路線として作られてこそ、定時・安全性を極められた。新幹線の安全技術の延長にリニアがある。在来線と分離した安全な高速鉄道というパッケージができる。

東海道新幹線は鉄橋の交換などが必要(出典:JR東海)

投資家が「リニア自社建設」を歓迎しない

 エコロジー、エコノミーという面で世界が高速鉄道に注目している。リニアはJR東海にとっても日本にとっても存在意義が大きい。大切なプロジェクトである。しかし皮肉なことに、JR東海のリニア計画が報じられるたびに、JR東海の株価は下がる。

 2007年12月に、JR東海はリニア中央新幹線を自社で建設すると公式発表すると、株価は瞬間的に前日比マイナス8万3000円(−8.6%)まで下がった(最終的には前日比7万1000円安)。その後も2008年10月に「名古屋―新大阪間も自己負担で建設」という社長談話を受けて下がった。ただしこの時は日経平均も下がっているので、談話だけが原因とは限らないのだが。

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