「企業が新入社員に求めること」を深読みしてみた(1/2 ページ)

» 2012年04月24日 08時00分 公開
[川口雅裕,Business Media 誠]
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著者プロフィール

川口雅裕(かわぐち・まさひろ)

イニシアチブ・パートナーズ代表。京都大学教育学部卒業後、1988年にリクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報(メディア対応・IR)および経営企画を担当。2003年より株式会社マングローブ取締役・関西支社長。2010年1月にイニシアチブ・パートナーズを設立。ブログ「関西の人事コンサルタントのブログ


 「新入社員に求めること」というテーマで、人事やビジネスパーソンを対象とした調査が昔からよく行われるが、どれを見ても「主体性」「コミュニケーション能力」が上位の定番で、「実行力」「遂行力」「働きかけ」といった職場での行動に関することがこれに続く。

 時代が変わっていく中で、「新入社員に求めること」は本当に変化しないものだと思うが、考えてみれば、これらは新人に求めることというよりも、組織で仕事をしていくのであれば、階層や職種に関わらず共通して求め続けられる大切なことだ。

 主体性とは自分の意思で判断したり行動したりすることだが、若手と課長と部長と経営幹部では求められる主体性のレベルは異なる。担当する分野や責任が大きくなると、意思を持てなくなったり、判断に躊躇(ちゅうちょ)したりするようになる人は多い。コミュニケーション能力についても同様で、表現力が問われるようになり、言葉の重みも増してくるし、報連相も複雑で戦略性が必要な場面が多くなる。主体性もコミュニケーション能力も、組織で働く上では、難しい課題としてずっと悩み続けるような類のことであって、新人だけに求められることではない。

 また、この手の調査はもともと選択肢が用意されていて、そこから選ぶので本当のことが分かるわけではない。回答者は、「新人に求めるのは、主体性とコミュニケーション能力だ」と明確に思っているのではなく、漠然とした状態で色々と思うところがあって、何となくそれに近いニュアンスのものを選んでいるだけで、実際には誘導された結果である。

 顧客にアンケートをとっても、真の要望や欲求をつかむことができないのと同じだ。選択肢を用意した段階で、すでに、用意した人は想定外の解を得る可能性をほぼ失っており、対象となる人の真意を取り逃がしてしまう。

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