「サービス残業はありえません」――日本人女性が称賛するドイツのワークスタイル世界一周サムライバックパッカープロジェクト(2/3 ページ)

» 2012年04月24日 08時00分 公開
[太田英基,世界一周サムライバックパッカープロジェクト]
世界一周サムライバックパッカープロジェクト

「サービス残業はありえません」

――ドイツと日本とで、異なる商習慣・労働条件などがあれば教えてください。

神谷 被雇用者が雇用者である会社と、1人ずつ労働契約書を取り交わすことが基本であるというのが、スタートからして違う点でしょうか。

 この労働契約書には、期待される労働の内容、給与、週の労働時間、年間有給休暇の日数などの情報がすべて記されていて、2部作成されるそれぞれに雇用者と被雇用者がサインして、1部ずつ保管します。

 給与体系は月額制が一般的で、日本のような夏冬のボーナスはありませんが、11月にクリスマスマネーとして、月給1カ月分相当の臨時給与がある会社が多いようです。

 ドイツでは、労働基準法が名目だけでなくきちんと順守されていて、サービス残業などありえません。残業した場合は、その分が賃金として支払われるか、代休をとらないといけません。

 これがきちんと守られなかったり、年間の有給休暇も年度内にきっちりと消化されないと、企業が政府から罰せられるというのはいいなと思います。

 その代わり、年度末に未消化の有給を消化するために、仕事はたまっているのに休みをとらないといけないこともあったりして、そのあたりの調整が大変です。

 その有給休暇も企業や職種によって多い、少ないはありますが、平均的には年間30日あるので、旅行好きなドイツ人はよく2〜3週間の長期滞在型旅行をのんびりと楽しんでいますね。

 その間、会社では担当不在で仕事が進まない、という事態もまま起こりますが、みんなお互いさまとして黙認しあっているようです。

――日本はドイツから何を学べると思いますか? またドイツは日本から何を学べると思いますか?

神谷 ドイツでは日本にはない個人主義が浸透していて、基本的にはいいと思いますが、ともすればそれが自己中心的になってしまうこともあり、このあたりのバランスをどうとるのかは、まだまだ改善の余地があります。

 バランスといえば、ワークライフバランスもかなりきちんととれていて、仕事は一生懸命やるけれど、家族とのプライベートな時間も大切にする、という姿勢がいいですね。

 さらに、数年前から男性も最長3年までの育児休暇をとれるようになり、若い世代では、男性の家事や育児への参加も抵抗なく行われているようです。

 反対に、ドイツのネガティブな点としては、デパートなどでも従業員がお客の前を横切るのが当たり前、薬局で買い物しようとしても、従業員同士のプライベートな会話が終わるまで待たされる、というサービス砂漠なので、世界一のクオリティの日本のサービスをドイツに学んでほしいです。

ミュンヘンにて

――言語の壁以外に、ドイツに来てから立ちはだかった困難はありますか?

神谷 「沈黙は金」「察する」「腹芸」などがまったく通じない、何でも言葉にして伝えていかないといけない文化背景に今でも戸惑っています。「モノを言わない人はバカだ」と思われるのです。

――海外(ドイツ)で働くこと、生活することの魅力について教えて下さい。

神谷 女性として、周りからやいのやいの言われたり、社会的な圧迫を受けることなく、自分のやりたいことができるのがいいですね。ドイツを含めて欧米では1970年代に本当の意味での社会変革が起こったと認識しています。

――今後の予定や将来の夢(目標)について教えてください。

神谷 新プロジェクトでのビジネスプラン・コンテスト参加で、ある程度の結果が出せるといいなと思っています。将来はこのプロジェクトをもとに、大きな企業にしたいものです。

――最後に、日本の若者にメッセージをお願いします。

神谷 月並みですが、将来の夢を明確に描いて、それに少しでも近づけるよう努力を続けましょう。私はそれをしてこなかったので、いまだに苦労の連続です。

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