「上から目線」という言葉にイラッときた人のための反論法(1/2 ページ)

» 2012年04月20日 08時00分 公開
[増沢隆太,INSIGHT NOW!]

著者プロフィール:増沢隆太(ますざわ・りゅうた)

RMロンドンパートナーズ(株式会社RML慶文堂)代表取締役。東京工業大学特任教授、コミュニケーション戦略家。人事コンサルタント兼大学キャリア教官兼心理カウンセラーで、東工大大学院では「コミュニケーション演習」の授業を行っているほか、企業では人材にも「戦略性」を重視する功利主義的アクティビティを提唱している。


 いつの間にやら定着した「上から目線」という言葉。たいていは言われた方が黙ってしまう、会話破壊に使える言葉です。でも、言われた方は何かしゃくに触りませんか? 「おっさんがワコード(若人)に言われた時に何て言い返せば良いの?」とおやじ友人に聞かれたことがあります。

 私もとても不快に感じる「上から目線」。言われてうれしいのはマリコさまくらいで、それ以外の場面ではすごく頭の悪い表現なのですが、あまりに獏とし過ぎていて反論も難しい言葉だと思います。

 数年前、NHKで『就職難をぶっとばせ』という番組がありました。そこに参加していたある中小企業の社長さんが「社会ってのは、仕事ってのはやりがいとかだけじゃないんだよ」みたいな発言をしていました。実に味のある、私は説得力ある言葉だなと思っていると、参加者の1人で就活中だという学生が「何でそんな上から目線なんすか」「上から目線で話さないで」とひと言で否定していました。

 年長者や目上の人、人生の先輩に対する敬意なんてのは、もはや昭和の遺物なんでしょうかね。私が生まれ育った東京の下町では、何だか正体の分からないおっさんが町には必ずいて、私ら下町の子どもたちはわけも分からず説教されたりしてました。中には全身総彫りの白髪頭のおじいちゃんなんかもフツーに銭湯に来ていて、何となくそんな大人との付き合いを、子どもながらに学び取った気がします。

 中小企業なんて目に入らない就活生にとって、中小企業の社長なんて何も学ぶものはない、単なるうっとおしいおっさんなのかも知れません。でも仕事の話、キャリアの話って、どんな人生を送った人のものでも何か参考になるものではないでしょうか。

 たとえ人生に失敗した人の話でも、私がアルバイトしていた歌舞伎町の裏の裏の世界でも、今にして思えば明らかにアル中と推定できるランドリーのおっさんが、いつもわけあり風のおばさんと黙々と、深夜に洗濯物の山と格闘している姿に、悲惨とか哀れ以外の、何かポジティブな生命力のようなものを感じたことを覚えています。「そうなりたい」とは思いませんでしたが、「いろんな人生があるんだな」と一番学べたのは歌舞伎町でした。

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