寓話がビジネスパーソンに与えてくれる教訓(1/3 ページ)

» 2012年04月18日 08時00分 公開
[村山昇,INSIGHT NOW!]
INSIGHT NOW!

著者プロフィール:村山昇(むらやま・のぼる)

キャリア・ポートレート コンサルティング代表。企業・団体の従業員・職員を対象に「プロフェッショナルシップ研修」(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)を行う。「キャリアの自画像(ポートレート)」を描くマネジメントツールや「レゴブロック」を用いたゲーム研修、就労観の傾向性診断「キャリアMQ」をコア商品とする。プロ論・キャリア論を教えるのではなく、「働くこと・仕事の本質」を理解させ、腹底にジーンと効くプログラムを志向している。


 今回は抽象的思考の1つである「比喩で考える」について書く。比喩で考えることには2つの種類がある。

 1つは「比喩の凝結」=物事を比喩表現に落とし込む思考。もう1つは「比喩の展開」=比喩表現を他の物事へ応用する思考。ここでは後者の「比喩の展開」を取り上げる。

共通性を見出してくくる……それが抽象作業

 まず、「抽象的に考える」とはどういうことかを改めて押さえることから始めたい。抽象とは、物事のある性質を引き抜いて把握することをいう。抽象の「抽」は「抜く・引く」という意味で、「象」は「様子・有り様」のことだ。

 次図を見てほしい。横に「ヒト」「キリン」「カエル」「ミジンコ」「サクラ」と並んでいる。そこでまず「ヒト」と「キリン」をくくる<共通性(1)>は何だろうか。次に「ヒト」と「カエル」を括る<共通性(2)>は何だろうか。そういう具合に<共通性(3)><共通性(4)>に入る言葉を考えてほしい。

 ……正解の一例を挙げると、順に「哺乳動物」「脊椎動物」「動物」「生き物」となる。このように複数の物事の間に何かしらの共通性を考えるということは、簡単に言えば、グループ分けをしてそこにラベル張りをする作業でもある。その作業をする時、私たちは必然的に、そこに並んでいる物事の外観や性質から特徴的な要素を引き抜き、どんなくくりで分類できそうかを考える。これがまさに抽象的に考えることにほかならない。

 より多くの物事、より関係性の弱い物事をくくろうとするほど、そこに付けられるラベルはより多くのあいまいさを含むようになる。共通性(1)の「哺乳動物」と、共通性(4)の「生き物」とを比べてみても分かる通り、後者のほうが概念の範囲が広く、その分だけあいまいさが増す。抽象度を上げて考えることはあいまいさを伴うのだ。

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