――一般のエンジニアが、猪子さんのように発想を飛躍させるというか、常識の枠を越える発想力を身に付けるには何が必要だと思いますか?
猪子 うーん。どうなんですかね? 何て言うか、みんなさ、実はこういう考え方が必要かもってこととか、デジタルテクノロジーを駆使すれば可能かもしれないってことを、もう知ってると思うんだよね。単純に、それを具現化する機会がないだけで。
もっとこうやったら面白いって思いは、エンジニアなら誰しもあるんじゃない? 違うのかな。だって……。
――それなのに、多くの人が実行できない理由って何なのでしょう? また逆に、なぜチームラボはそれができちゃうのか。
猪子 うーん。チームラボは、非上場で株主もたくさんいる会社じゃないから、「もうかんなくてもやる」っていうスタンスがあるからかもしれないですね。
それに、さっき話したみたいに「空間」を相手にして実験的なことをやろうとすると、それなりに複雑なことも出てくるから、幅広い専門職を集めてやらざるを得なくってさ。チームラボには、幸いなことにいろんな専門分野のエンジニアたちが集まってくれたから、何とかみんなの力でやれてるんじゃないかと思いますよ。僕の発想がどうこうとかいう以前の話かも。
――では、質問をポスト・ジョブズの話題に戻します。ユーザーの立場から見ていると、iPhoneやiPadが登場した時のように、テクノロジーがあるタイミングを境に突然飛躍したように見えることがあります。それは何が原因だと思いますか?
猪子 確かにiPhoneとかiPadはパラダイムシフトを起こしたけど、技術開発に大きな飛躍があったからじゃないと思う。技術ってさ、階段を一歩一歩上るようにしか進化していかないから。
じゃあ、何であんなに大きな変化が起こったのかって言えばさ、アップルみたいなソフトウエアの会社がハードウエアの領域にも足を突っ込んでやってきて、その上でネットワークも前提にしたモノ作りをしたからじゃん、って思うんですよね。当然、プレーヤーが違えば考え方も違うし、モノの作り方も変わるから、でき上がったハードから受ける印象も違った。
これまでのモノ作りは、まずハードありきで、ソフトやUI、ネットワーク機能なんかは分業でさ。後から付け足すような開発の進め方を長年し続けてきたわけだよね、どこのメーカーも。でも今は、ネットワークを前提としたモノ作りの方が主流になっちゃった。ネットワークの進化とアップルのチャレンジで、プロダクト開発のルールが完全に変わっちゃった。
だから、今のモバイルの世界は、アップルとかグーグルみたいな会社が、業界のメインプレーヤーになってるでしょ。逆に、ルールが変わってたのを理解できなかった日本の電機メーカーが、どんどん携帯分野で競争力を失っちゃってるのは、もう当然なんだよね。
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