愚の骨頂だったことが「いいね!」に――猪子寿之が考える次世代のクリエイティブNew Order ポスト・ジョブズ時代の新ルール(2/4 ページ)

» 2012年04月18日 08時00分 公開
[取材・文/武田敏則(グレタケ) 撮影/竹井俊晴,エンジニアtype]
エンジニアType

これからは「テクノロジー×空間演出」に可能性があるはず

取材中、何度か長い沈黙が。だが、口を開いてから紡ぎ出てくる言葉は、どれも本質をとらえていた

猪子 じゃあ、スマートテレビは一体何なのかってことになると思うけど、僕は複数人が同じ空間で利用できるネット端末だなって思うんですよ。今はそれに気付いている人があんまりいないから、まだ最適化されたサービスとかインタフェースが誕生してないけど。

 ただ、僕はそこにニーズが確実にあると思うし、チームラボがテクノロジー×アートとか、テクノロジー×リアルの領域でモノ作りを手掛けているのも、この「空間をデジタルテクノロジーで変える」ことに可能性を感じているからなんですよ。

 同じ空間に集まって、誰かと何かを共有するって、本質的に楽しいじゃないですか。ライブとかショッピングだってさ、ネットを使えば1人で音楽聞けるし買い物だってできるのに、あえてライブ会場に足を運んだり店舗に行ったりするのはなぜなのか。それってやっぱ、楽しいからだと思うんですよね。

 自分が好きなものを、同じように好きな人たちと同じ空間に集うのって、すごいエクスタシーじゃん。であれば、テクノロジーを使ってそれをどんな風に演出するか、どう発展させていくかって考えるのが、重要なんじゃないかとずっと思っていて。

 これまでチームラボが開発したり、プロデュースしてきたいろんなプロダクトも――例えば『チームラボハンガー』とか『チームラボボール』なんかですけど――、その一端なわけで。『チームラボボール』なんかは、ライブ会場とかに集まってくる人たちをテクノロジーで盛り上げるには……って発想から生まれてるし。

 話をiPhoneに戻すと、ニーズはあったけど誰も応えられてないって領域に生み落とされたプロダクトは、人の目の前にあった次元を一足飛びに越えちゃうような発想から生まれてる。これと同じように、1つの空間にいる複数の人を対象にしたサービスなり、インタフェースってどんなもんなんだろって考えると、リビングにあるテレビだけじゃなく、商業施設全体とか、都市そのものがネット端末の延長になるってことも考えられる。

 アップルがiPhoneでやったみたいに、ハードだけじゃなくって、ソフトやインタフェース、ネットワーク設計まで全部セットにして提案できないと、大きなインパクトは生まれないと思うけど。

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