愚の骨頂だったことが「いいね!」に――猪子寿之が考える次世代のクリエイティブNew Order ポスト・ジョブズ時代の新ルール(1/4 ページ)

» 2012年04月18日 08時00分 公開
[取材・文/武田敏則(グレタケ) 撮影/竹井俊晴,エンジニアtype]
エンジニアType

「New Order−ポスト・ジョブズ時代の新ルール−」とは

『エンジニアtype』が創刊1周年を記念して贈る特別企画。スティーブ・ジョブズが遺したイノベーションを進化させ、新しいスタンダードを生むために乗り越えるべき壁とは何か? 新たな価値創造にのぞむ各界の大物10人が、時代の新ルールのあり方について語る。


 アップルが生み出したiPhoneやiPadは、ソフトウエアとハードウエアを高度かつ斬新なクリエイティブ力によって見事に融合させ、世界に革新をもたらした。

 この、ジャンルの垣根を越えたモノづくりが注目される中、日本でもテクノロジー×リアルの融合に挑戦し続ける人がいる。その男・猪子寿之氏の眼には、これからの時代に問われるクリエイティブのカタチはどううつっているのか?

猪子寿之氏

猪子寿之(いのこ・としゆき)

チームラボ代表。1977年生まれ。東京大学工学部応用物理・計数工学科を卒業と同時にチームラボを創業。「ウルトラテクノロジスト集団」の代表として、最先端テクノロジーの研究や各種Webプロデュースを行うIT業界の異端児。最近は、そのクリエイティブの範囲をアート領域にも拡大しており、『百年海図巻』など、技術とセンスを高度に組み合わせた数々の作品を世に輩出している


デジタルテクノロジーによって再構築されていく

――猪子さんはチームラボで、テクノロジー×アート×リアルの融合を数々実践されています。今後、テクノロジーはわたしたちの生活や仕事にどう絡んでいくとお考えですか?

猪子 今、僕らが持ってるPCとか携帯電話とかって、ネットワーク化されることで大きく変わったと思うんだけど、これからはそれだけじゃなくて、世の中にあるほとんどのモノがデジタルテクノロジーによって再構築されていくと思うんですよ。

 例えばiPhoneってさ、「携帯電話の延長線上」に生まれたものだと考えてる人が多いと思うんだけど、そもそもこれって本質的には全然別で。携帯電話は固定電話の延長線上で生まれたかもしれないけど、iPhoneは携帯電話の延長じゃなく、むしろ「ネット端末の延長」に生まれたモノだって思うんです。

 何でiPhoneが世界中で受け入れられたのかを僕なりに考えると、それは「携帯電話よりもネットワーク社会に最適化された製品」だったから。電話機の延長線上じゃないところから携帯電話を考え直したって発想の飛躍がクリエイティブだったし、あれだけの人を熱狂させたんだと。ネットワークとかデジタルテクノロジーが世の中を変えるって、そういうことだと思うんですね。

 スマートテレビなんかもそう。あれも、今までのテレビの延長線上にあるモノだってみんな誤解してる。もしかしたら、開発してる側の人たちもそうなのかもしれない。だから、出てくる話が「リビングでSkypeができる」とか、「テレビでもFacebookが見れる」とか、そういう話になっちゃう。それって全然違うんですよ。

 だって、SkypeやFacebookって、スマートフォンの方が利用シーンに合ってるし、家ならPCで使った方が見やすいじゃないですか。両方ともパーソナルユースを前提に最適化されてるサービスだから、当たり前の話だと思いません?

 だから、スマートテレビでSkypeしたり、リビングでFacebookを見るなら画面はやっぱり大きい方が良いはずだ、みたいな話って、さっきの携帯電話とiPhoneの比較と一緒で本質的じゃないわけですよ。

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