今や老若男女を問わず、愛されるようになったアニメーション。「日本のアニメーションは世界にも受け入れられている」と言われることもあるが、ビジネスとして健全な成功を収められている作品は決して多くない。この連載では現在のアニメビジネスについてデータをもとに分析し、持続可能なあるべき姿を探っていく。
『となりのトトロ』『千と千尋の神隠し』など、多くの国民的映画を生み出してきたスタジオジブリ(以下、ジブリ)。前回の記事では、宮崎駿監督作品が1作平均興行収入100億円超という驚くべき数字を叩き出すことによって、劇場オリジナルアニメ中心のビジネスモデルが成立してきたことを解説した。
ところが今、このジブリを支え続けてきたビジネスモデルが転換期を迎えているように見える。次表はジブリ作品の興行収入の推移だが、『千と千尋の神隠し』以降、興行収入が下がりつつあることが分かる。
そして、2011年の『コクリコ坂から』では、「公開年に興行売上によって製作費を早々に回収」というモデルが難しかったのではと推測される。というのは、邦画ナンバーワンである44億6000万円という興行収入をあげても、実際製作サイドに入るのは、劇場取り分(通常50%)、配給手数料(通常劇場取り分後の配給収入に対する10~30%)、宣伝費など(任意の金額だが同作品クラスなら億単位)が引かれた残りの金額になる。
製作費は未公表だが、ジブリはクオリティを重視するので今回は製作費を回収できていない可能性があるのだ。テレビアニメ製作などによる定期的な製作収入がなく、かつ作品数の少ないピクサーやジブリのビジネスモデル(ピクサーはディズニー傘下となった2006年から年1作体制に移行)では、興行で製作費が回収できなくなると、経営に対する影響が出ると思われる。
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