上司なら知っておくべき、“評価”と“審査”の違いとは(1/2 ページ)

» 2012年04月17日 08時00分 公開
[川口雅裕,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール

川口雅裕(かわぐち・まさひろ)

イニシアチブ・パートナーズ代表。京都大学教育学部卒業後、1988年にリクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報(メディア対応・IR)および経営企画を担当。2003年より株式会社マングローブ取締役・関西支社長。2010年1月にイニシアチブ・パートナーズを設立。ブログ「関西の人事コンサルタントのブログ


 新任のマネジャーや初級管理職の研修には、必ず「評価」というテーマがある。それまでは評価される側だった人が、昇進して部下を評価する側に回るのだから、間違いのないよう評価の原則やスキルを学んでもらおうという目的である。

 テキストには「先入観を排し、事実に基づいて評価する」「成果と能力と行動(働きぶり)を混同せず、分けて評価をする」「評価の結果だけでなく、プロセスや根拠についてもしっかり説明する」といった原則が書いてある。ハロー効果や親近効果など、陥りやすい評価のエラーなども定番だ。そして、ケースがあってそれを評価してみよう、みんなですり合わせてみようという流れで進んでいく。

 いつも思うのは、このような内容であれば“評価者研修”ではなく、“審査員研修”ではないかということだ。審査員とは、コンテストなどで出場者のパフォーマンスや出品された作品に点数をつけるエライ人たち。ほとんどの評価者研修は、点数の付け方や、点数をつける際のコツや注意点を学ぶことが中心テーマになっているので、それは“審査”だろうと思う。

 評価者は、決して“審査員”になってはならない。「部下のパフォーマンスや能力を正しく測定・採点することが大事だ(それが評価において最も大切なことだ)」などと思っているとするなら、それは間違いだ。

 評価者は上司でもある。また、立てた目標は、部下本人だけではなく、上司にとっても組織にとっても重要なもののはずである。であれば、考課期間中に目標が達成できそうもない、期待した働きぶりとは違うと感じたときに、すぐに支援、協力し、修正を図ろうとするのが当然だ。ところが、放っておいて、数カ月経った評価の時期になって「未達成」「期待以下」と平気で評価する、あるいは思い出したように「あの時に……のような言動をとったからダメ」などと指摘する。

 これでは、舞台で歌っているのを腕組みして見て、最後に点数をつけるのが仕事の“審査員”とまったく同じだ。評価者はその目標に当事者意識を持つ上司でもあり、途中で支援をしなければならない。「評価者−支援=審査員」だ。支援をしない上司は、評価者ではなく、単なる審査員である。

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