覚せい剤を密輸した男が明かす、北朝鮮の仕事術窪田順生の時事日想(3/4 ページ)

» 2012年04月17日 10時30分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]

「失敗する時はだいたい中国人船長だった」

「瀬取り」が失敗したこともあった。その理由は……(写真と本文は関係ありません)

 そんなマンガみたいなプロジェクトを実現させた理由を、X氏に聞いたところ取引相手の「仕事に対する取り組み」も挙げていた。

 「やはり成功したのは北朝鮮だからということも大きい。直接連絡をとりあったわけではないが、海に落とす時間も正確だし、覚せい剤についてもこちらが指定した梱包や結び方をちゃんとやっていた。完璧だった。やはり軍人だからだろう」

 そう、北朝鮮は基本的にこのような裏ビジネスを行っているのも「軍人」である。ゆえにルールは厳守、マシーンのような正確さで計画を遂行。私情や予断も一切挟まない。ちょっとした歯車が狂うだけで失敗してしまうようなプロジェクトのパートナーとしてはうってつけだというのだ。

 事実、鳥取沖にX氏たちが回収できなかった230キロの覚せい剤が漂着するなどして「瀬取り」が失敗した時もあるが、それは北朝鮮の者が関わっていない時だったという。

 「失敗する時の理由は、向こうがルールを守らないからだった。出航する時間も平気で遅れたりするからすべての計画が乱れる。そういう時はだいたい、相手の船を操っていたのは中国人の船長だった」

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