「クラウドがWebサービス作りのルールを変えた」――AWS長崎忠雄が語る“New world of IT”New Order ポスト・ジョブズ時代の新ルール(2/3 ページ)

» 2012年04月17日 08時00分 公開
[取材・文/瀬戸友子 撮影/竹井俊晴,エンジニアtype]
エンジニアType

革新のタネとなる実験の繰り返し

「クラウドは一瞬のひらめきを逃さないためのメモのようなもの」(長崎氏)

長崎 New world of ITは、ユーザーの選択肢を大きく広げるものだと考えています。資金的な制約のあるスタートアップ企業にも、初の海外進出をもくろむ中小企業にも、大企業に対しても、エンジニアなどの人材リソースをよりコアコンピタンスにつながる仕事に注力させたい。

 クラウドコンピューティングは、さまざまなユーザーの多様なニーズに応えて、ITの側面からイノベーション創出に寄与するサービスだと考えています。

――企業がイノベーションを創出するためにITが果たすべき役割とはどういうものでしょうか?

長崎 イノベーションとは、さまざまなトライ&エラーの末に生まれてくるものだと考えています。たくさんの“実験”が繰り返されることで、初めて成功のタネが生まれてくるのです。

 例えばエンジニアが何か斬新なアイデアを思い付いたとする。その時にサーバやストレージの調達を待たなければならないとなったら、すばらしいひらめきもそこで消えてしまう可能性が高いでしょう。

 みなさんそれぞれに、いろいろなアイデアをお持ちのはずです。それを実現するために、まずは必要なコンピューティングリソースを即座に提供して、実験できる環境を整えることが重要だと思います。そういう意味で、クラウドを活用することは、テクノロジーリソースへいつでもアクセスでき、事前に使用量を拘束されることなく実際に使用した分のみを支払うことを可能にします。アイデアやプロジェクトが出て来次第、もっと速く動くことができるため、お客さまへのご提供も加速します。

 現在の日本企業は、厳しい環境にさらされています。国内市場区分がシュリンクする中、グローバルに活路を求める企業は多く、国際競争力を付けなければなりません。一歩外に出れば、日本とは違うルールで戦っていかざるを得ません。

 日本に関する話題で、印象に残っているものがあります。日本企業がサービスを作る場合、完成度が90%であれば、そこからさらに97%、98%、99%と、可能な限り完成度を高めてからローンチしようとする。ただ、最後数%を上げるためにかかるコストは飛躍的に高くなります。

 一方、米国式の発想では、その最後の数%で得られるメリットとコストをバランスにかけて、90%でよしとする。コスト管理やリスクに対する考え方一つとっても、日本と欧米とではかなり異なります。

 世界にもまれる中で、いかにスピード感をもってアイデアを実現していくかが、成功のカギになります。実験の環境を整えるクラウドコンピューティングは、スピーディーなイノベーションの実現を支えるITのあり方ではないでしょうか。

 クラウドの登場によって、資本力や企業規模といった垣根を取り払い、変革のスピードをさらに速めることが可能です。まさにこれが、クラウドコンピューティングに望まれていることだと思います。

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