コラム
» 2012年04月16日 07時59分 UPDATE

藤田正美の時事日想:ミサイル実験が明らかにした日本の危機管理の未熟さ (1/2)

失敗に終わった、北朝鮮のミサイル発射実験。しかし、実験に備えて万全の準備をしていた日本政府だが、実際にはうまく稼働しなかった。なぜそんなことが起こってしまったのだろうか。

[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 北朝鮮がミサイル発射実験に失敗した。そして日本は、危機管理の未熟さをまたも露呈した。民主党政権だからこうなのか。それとも政治主導という掛け声ばかりで実態が伴わないということなのか。

ah_huzita1.jpg 北朝鮮公式Webサイト

 北朝鮮の「ミサイル危機」では初めからボタンを掛け違えているところがあった。自衛隊を南西諸島に配置して、万が一に備えるというのは分からなくもない。対中安全保障ということを考えれば、南西諸島は重要な戦略的意味を持っているから、そこに配備できることを示しておく必要があるだろう。

 しかし今回の場合、日本に落ちてくるとすれば、発射されたミサイルに事故が起きた場合と想定されていた。ロケットの切り離しがうまくいかないとか、あるいは軌道をそれたために自爆するといった場合である。「破片」になってしまえば、PAC3などで迎撃することは難しい。その意味では、自衛隊の配置よりも前に、まずミサイルの破片から子どもや市民の安全をどう守るかという問題があったはずだ。だからこそJ-Alert(全国瞬時警報システム)を使うことにし、テストも行って不具合がないかどうか点検した。

 J-Alertで「打ち上げた」という警報を出し、防空壕はないから鉄筋コンクリートなどの建物に「避難」するというのが筋である。その上で、PAC3やイージス艦による迎撃というシナリオがある。もちろん「避難」シナリオと「迎撃」シナリオは、どちらが優先ということでなくてもいい。避難は総務省や警察庁、迎撃は防衛省管掌だろうから、それぞれが準備すればいい話である。もちろん情報の共有は文字通り「瞬時」に行われなければならない。

 ところが実際に北朝鮮が打ち上げたら、日本の対応は結果的にみっともないことになった。米軍の早期警戒衛星(SEW)から発射したという情報が直後に流れたにもかかわらず、国民に知らされたのは46分後だった。3年前に誤報を出して大顰蹙をかったから、その二の舞をせぬようダブルチェックしようとしたのだという。ところが、発射後、間もなく爆発したために、イージス艦や地上のレーダーで確認することができず、「わが国としては確認していない」という発表をせざるをえなくなった。

 しかし、ここに大きな勘違いがある。結果的に誤報あるいは騒ぎ過ぎになったとしても、北朝鮮の発射がいつになるのか自治体は神経をとがらせていたのだから、米軍からの第一報を受けて、「発射した模様」で発表すればよかったのだと思う。何も日本に影響がなく、「騒ぎ過ぎ」だったという結果になったとしても、それは非難されるような話ではない。

 政府の使命のうち、最も重要なことは、国民の生命、財産を守ることだ。その1点において、たとえ政府が「前のめり」になって行動したところで、何を恐れることがあるだろう。万が一に備えるとはまさにそういうことだと思う。結果的に「誤報」であっても、それは仕方のないことだ。

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