ソーシャルメディアがオフラインの交流も変えた――津田大介が語る、コミュニケーション革命New Order ポスト・ジョブズ時代の新ルール(3/3 ページ)

» 2012年04月16日 08時00分 公開
[取材・文/瀬戸友子 撮影/竹井俊晴,エンジニアtype]
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セレンディピティの増大こそ、ソーシャルメディア革命最大の恩恵

「ソーシャルメディアがコミュニケーションを活性化させたのは言わずもがな。ビジネスや経済にも大きなインパクトを与えている」(津田氏)

津田 これまでなら、友だちになりたくても機会を逸してしまえばそれまででしたが、ソーシャルメディアを通じて接点を持つことができます。面識はなくても、その人の人柄や考え方が何となく分かってくれば、どこまで踏み込んでいいのかというポイントもつかめるので初めて会う相手でもすぐに仲良くなれる。

 逆に一度しか会ったことのない人とも、一生関係を続けていくこともできます。おそらくソーシャルメディアを活用している人は、親友と呼べる人の数が1ケタも2ケタも違ってくるはずです。

 リアルな世界だけでも人とつながることはできますが、普通は何度か食事したり、飲んだりするうちに少しずつ親しくなっていくものです。ソーシャルメディアは、そのスピードを格段に早めてくれます。

 建前とか形式とか手続きとか、踏まなくていけないプロセスをすっ飛ばして、人と人とが深いところで直につながることができる。ここで生まれた深い出会いがきっかけとなって、人生が変わることだってあるでしょう。

 実際に、ソーシャルメディアを介して知り合った人と、交際から結婚に発展したり、転職につながったり、社会的地位も年齢も異なる人と交流を深めていく例もあります。

 それをつかめるかは本人次第ですが、セレンディピティがそれまでの100倍にも、1000倍にも増えることが、ビジネスや経済に及ぼす影響ははかり知れません。

「技術×何か」の掛け合わせがイノベーションを促進する

――こうした状況は、エンジニアなどサービスの作り手にとって、どのようなチャンスにつながるのでしょうか?

津田 ソフトウエアエンジニアのニーズが、ますます求められるようになるのは言わずもがな。今後はITスキルを何かまったく異なる分野で生かすことが重要になってくると考えています。

 ソーシャルメディアの台頭によって、情報の量が劇的に増大しているという話をしましたが、ではこの多過ぎる情報をどうやって処理するのか。佐々木俊尚さんの言うキュレーション、人の力で意味のある情報を仕分ける方法もあれば、テクノロジーを活用する方法もあります。僕は両方必要だと思います。

 この領域で一番熱い技術分野は、データマイニングじゃないですかね。ソーシャルゲームなどのWebサービスの世界でも、データマイニングを使ってKPI分析などを行っています。そうしたスキルを持つエンジニアが、情報を選別して意味付けするキュレーションの能力を身に着けたら極めて強い。

 例えば、最近データジャーナリズムというものが注目されています。世の中にある膨大な量のデータを解析し、分かりやすく表現することによって、社会を読み解いていくというもので、数学的な知識やプログラミングのスキルが必要です。僕がエンジニアだったら間違いなく取り組んでいますね。

 技術的な素養のまったくない編集者やライターが、今からプログラムの勉強をしてエンジニアとして大成するのはなかなか難しい気がします。でも逆に、アプリもWebサービスも作れるエンジニアが、編集的なセンスを磨いたり、原稿を書くトレーニングをしたり、ジャーナリズム的な視点や方法論を後天的に身に付けていくのは、前者に比べればそこまで難しくはないと僕は思います。

 コードが書けて、アプリも作れて、データマイニングもできて、それを社会事象の分析や、ジャーナリズムに応用させられる。そんな新時代のスーパージャーナリストが生まれるのも、時間の問題じゃないでしょうか。僕も今大学生だったら、間違いなくプログラム言語の勉強をしていたと思います。

 もちろん、技術者はジャーナリズムに限らず、それぞれ興味のある分野を探せばいい。掛け合わせる対象が何であれ、イノベーションは高度な専門能力をまったく異なるものと組み合わせた時に起こります。

 スティーブ・ジョブズは、強烈な意志をもって世界を変えました。FacebookやGoogleも世界を変えた。イノベーションはテクノロジーによって起こってきたし、これからの世の中もテクノロジーによって変わっていくことでしょう。エンジニアとしての能力は、あらゆる場所で生かすことができ、その異質な出会いが新しいものを生み出していきます。

 それをすべて1人でやる必要もありません。ソーシャルメディアを介して、目標を同じくする人と出会うチャンスも増えています。それぞれの能力を掛け合わせた小さなチームで、新しい世界を創り出していく。そんな人たちが、どんどん出てくることを期待しています。

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