「ジョブズになれると思うな!」――成毛眞が語る、きっと変革者になれない人の人生論New Order ポスト・ジョブズ時代の新ルール(1/3 ページ)

» 2012年04月13日 08時00分 公開
[取材・文/瀬戸友子 撮影/桑原美樹,エンジニアtype]
エンジニアType

「New Order−ポスト・ジョブズ時代の新ルール−」とは

『エンジニアtype』が創刊1周年を記念して贈る特別企画。スティーブ・ジョブズが遺したイノベーションを進化させ、新しいスタンダードを生むために乗り越えるべき壁とは何か? 新たな価値創造にのぞむ各界の大物10人が、時代の新ルールのあり方について語る。


 「次のスタンダードを作るのは、あなたでもなければ、あなたの周りにいる誰かでもない」――ジョブズやビル・ゲイツなど、時代を変えた稀有な才能の数々を、間近で見続けてきた成毛眞氏はそう断言する。

 それよりも時代を作る人を見つけて、早く近くに行くべきだ、と。揺れ動く時代の中、サービスの作り手として、しなやかにたくましく生き抜いていくために、知っておくべき事実とは?

成毛眞氏

成毛眞(なるけ・まこと)

株式会社インスパイア取締役ファウンダー。1955年北海道生まれ。中央大学商学部を卒業後、アスキーを経て、1986年、米マイクロソフトの日本法人に入社。1991年、同社代表取締役社長に就任。2000年に同社を退社し、投資コンサルティング会社のインスパイアを設立。同社取締役ファウンダーを務めるかたわら、他企業の取締役や顧問なども兼務している。近著に『成毛眞のスティーブ・ジョブズ超解釈』(KKベストセラーズ)がある。


スティーブ・ジョブズの功績

――ジョブズについて、成毛さんはどう評価していますか?

 スティーブ・ジョブズがやったことで最も大きいのが、「ソフトウエアからハードウエアにスポットを当てたこと」と、「テクノロジーをアートに変えたこと」でしょうね。

 それまで世の中の流れは、ソフトウエア一辺倒でした。ソフトを作っている米国が時代の最先端を走っていて、ハードを作る日本のメーカーを見下ろしているような空気さえあった。そこにジョブズが、「ソフトウエアなんて誰でも作れるじゃないか」とばかりに、ほかにはない意匠の製品を次々と送り出した。それによって、今またハードが見直されています。

 ではこれからはハードウエアに注力すべきかと言えば、そうとも限らない。こうした“流行”は時とともに移ろうものなんです。

 コンピュータの歴史を見ても、センター側と端末の地位は絶えず逆転してきました。メインフレームの時代は、センター側が集中処理して、端末はタイプライターで良いとされた。そのアンチテーゼとしてPCが登場した。処理能力の高いPCがあれば、分散処理してサーバで動かすから、メインフレームはもう要らないと言われていました。

 それが今度はクラウドが出てきて、データセンターが集中管理するから、もはや端末はケータイでもいい、と。きっとこの次は、また端末が重くなることでしょう。

 建物も高層マンションと低層住宅の人気が交互に来るし、ファッションだって、スリムパンツの次はベルボトムが流行っているかもしれない。あらゆるものが両極の間を揺れ動いている中で、今はたまたまハードウエアが注目されている。確かにそれはジョブズがきっかけだったでしょう。

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