非モテ男、電源ガールとプリウスPHVを充電する【最終回】プリウスPHVでモテる?(4/7 ページ)

» 2012年04月12日 19時35分 公開
[吉岡綾乃,Business Media 誠]

福岡から東京まで、給油2回で到着

 「ここまで来たら、1回くらいちゃんと外の充電スタンドで充電したい」そう思ったホリウチくんは、再度G-BOOKを起動すると、ルート上の充電ステーションを検索した。「日比谷公園の近くに充電できるところがあるみたいだね。ここ行ってもらっていい?」「了解。通り道だし、いいわよ」

 すでに夕方、日が暮れようとしていた。EVモードで走れる距離はとっくに走りきっており、さっきからずっとHVモードで走っている。「電源ちゃん、ごめんね。EVで走れるところまでって約束守れなくて……ガソリンはまだある?」

 「うん。このクルマ、ついEVモードに注目しがちだけど、実はHVモードの燃費がすごくいいの。高速道路に乗らずに、一般道をのんびり走ってる分には、びっくりするくらいガソリンを使わないのよ。私、福岡から東京までかなりの距離を走ってきたけど、まだ2回しか給油してないもの。同じクラスの普通のガソリン車に比べたら、ガソリンスタンドに行く回数は数分の1で済んでると思う」

 カーナビの誘導に従ってたどり着いたのは、日比谷公園の地下にある駐車場だった。入り口を抜けてまっすぐ進むと「EV200V CHARGING POINT」と書かれたスペースがある。電源の部分には、さっきコインパーキングで見た3相の充電口と、見慣れた家庭用電源と同じ充電口が2つ並んでいた。今度は大丈夫そうだ。

日比谷公園の地下にある日比谷自動車駐車場は、G-BOOKにも登録されている充電スポット
駐車スペースの一部がEV用になっており、プリウスPHVも充電OK。このときは隣で日産リーフが充電中だった

日比谷自動車駐車場には、200V×2カ所、100V×1カ所の充電設備がある。200V電源は差し込み口が2種類あり、EVもプリウスPHVも充電可能

 クルマを止めて、今度こそ充電。2つ並んだ充電口の右側に充電コードを差し込んで待つことしばし。「駐車場で充電って、よく考えたら『駐車』が主目的じゃないとどうしようもないね。駐車してる間に、ついでに充電をするためのモノなんだなあ。充電が主目的だと、その間確かにヒマだ……」

 「ねえホリウチくん、なんとなくここに来ちゃったけど、何分ここで充電するの?」「まあ、30分くらい? 僕は暇つぶしの道具持ってるから、それくらい大丈夫だけど。電源ちゃん、何か持ってないの?」「……え?」「ヒマだったら、上に上がって日比谷公園でも見てきたら? 東京来たの初めてなんでしょう。観光名所、というには地味だけど……あ、道路挟んで向かいにあるのは帝国ホテルだよ。30分でも1時間でもいいから、適当に遊んでおいでよ」

 「……ホリウチくんはその間、何やってるつもり?」「僕? しばらくここでゲームでもやってるから気にしないで」

 (……な、何よ。私ひとり放っておいて、自分だけゲームしてようっていうの?!)

 電源ガールはムッとした顔だが、ホリウチくんはまったく気づいていない。何ごともなかったようにGalaxy Tabを取り出すと、電源ガールには目もくれず、黙々とゲームをやり始めた。

 (……何この人。信じらんないっ!)

 電源ガールはクルマを降りると、助手席側に回り込み、バタンと乱暴に扉を開けてホリウチくんを引っぱり出した。「ゲームならクルマの中にいなくたってできるでしょ。じゃあね!」素早く運転席に戻るとすばやく鍵を閉め、ホリウチくんを日比谷公園の地下に置いたままプリウスPHVが走り出した。「じゃあね、バイバイ! 自力で帰って!」

 立ち尽くすホリウチくんを置いて、電源ガール(とプリウスPHV)はあっという間に走り去ってしまった。

 「あ、あれぇ……電源ちゃん、どうして急に怒りだしたんだろう……?」

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