「60歳以上は信用するな!」 ――夏野剛が若者に説くワークスタイルの新フォームNew Order ポスト・ジョブズ時代の新ルール(1/4 ページ)

» 2012年04月09日 08時00分 公開
[取材・文/武田敏則(グレタケ) 撮影/桑原美樹,エンジニアtype]
エンジニアType

「New Order−ポスト・ジョブズ時代の新ルール−」とは

『エンジニアtype』が創刊1周年を記念して贈る特別企画。スティーブ・ジョブズが遺したイノベーションを進化させ、新しいスタンダードを生むために乗り越えるべき壁とは何か? 新たな価値創造にのぞむ各界の大物10人が、時代の新ルールのあり方について語る。


 「インターネットの普及が、人類に3つの革命を起こした」と語り、自身もiモードによって世界に先駆けて個人をモバイルインターネットに結び付けてきた夏野剛氏。

 ジョブズ同様、人々のライフスタイルを革新的に変えるサービスを世に投じてきた彼には、日本人のワークスタイルに関して、どうしても若者に伝えたいことがあるという。

夏野剛氏

夏野剛(なつの・たけし)

慶應義塾大学政策・メディア研究科特別招聘教授。1965年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京ガス入社。米ペンシルベニア大学経営大学院ウォートンスクールでMBAを取得。1997年、NTTドコモに転職し、iモードの立ち上げに携わる。現在は慶應義塾大学で教鞭を執るほか、ドワンゴを始め、セガサミーホールディングス、グリーなど数多くの企業で役員や顧問を務めている


ネット普及による3つの革命

―― インターネットの普及によって、私たちのライフスタイルは大きく変わりましたが、さらなるWebサービスの浸透は、今後どういった変化をもたらすのでしょうか?

夏野 インターネットが生活に影響を及ぼし始めたのが1998年前後。それから今まで、ネットの普及は3つの革命が起こしたと私は考えています。

 まず1つ目が“ビジネス革命”。Web上にビジネスのフロントラインが拡がったことで、これまでの「商圏」という概念が取り払われてしまいました。

 例えば、1998年まで、国内線の航空チケットの売り上げは、コールセンターか旅行代理店からの受注によって占められていましたが、このころを境にWebからの予約販売が増え、今やインターネット経由の売り上げが約70%を占めるまでに至っています。

 松井証券がネットトレードを始めたのも同年ですし、楽天が創業したのもこの前年。企業を取り巻くビジネス環境も、リアルからバーチャルに拡大していったんです。これが最初の革命。

 そして次に“検索革命”。奇しくもグーグルの創業も1998年。それから14年あまりで、検索エンジンなくしては仕事にならないほど、日常に密着しています。これって一昔前ならとても考えられないことだと思いませんか?

 僕が学生だった1980年代なんて、何か調べものをようと思ったら図書館に通う以外方法はありませんでしたよ。その上、何日も苦労して探しても出てくるのは古い文献ばかりで使い物にならない(笑)。それが今では、一晩家にこもってググるだけで世界中の情報が入手できる時代になってしまった。

 昨年の原発事故の時もそうでしたよね。事故直後から原子力の専門家でも何でもない普通の人が、世界中のWebサイトから論文や資料を入手し、少なくない数の人がメルトダウンを予測していた。この事実を3カ月後に認めた政府より、はるかに高いレベルの知識を一般人が得ていたんです。個人の情報収集能力が劇的に向上しているのは間違いありません。

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