なぜ「孤独死」が増えているのか? 減らす方法はある窪田順生の時事日想(5/5 ページ)

» 2012年04月03日 08時01分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]
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40年以上前から「孤独死」を扱ってきたマスコミ

 「また東京の孤独死 一週間目発見」

 おいおい、またかと暗い気持ちになるかもしれないが、この見出しは42年前の『朝日新聞』(1970年4月16日)のものだ。先の死体撤去の男性ではないが、「孤独死」は昔から存在していた。

 同じく朝日新聞の1984年の見出しでも「58年の都内の『孤独死』千人 60歳代以上が4割、半年間気づかれぬ例も」とあり、数字だけ入れ替えれば、明日の朝刊でもいけそうだ。

 誤解を恐れずに言うと、「孤独死」とは現代社会でコンスタンスに起きる社会病理で、貧困や災害など世相に合わせ、「無縁社会」のようにクローズアップされるネタということだ。

 また「天声人声」ではこんなことを言っていた。

 「こうした悲劇には、公共料金の滞納、たまる郵便物などの前兆がある。微弱なSOSが、プライバシーの壁を越えて行政に届く策を巡らせば、かなりの孤立死は救えよう。懸命に生きようとした人の終章を、天井や壁だけが見届ける酷。きずな社会への道は険しい」

 ガスメーターをチェックせよとか、地域社会をもっと声がけしろとか人にあれやこれやと指図する前に、すべきことは山ほどある。

 まずは高齢者や社会的弱者に「無縁」だ「孤独」だと脅すような報道をやめればいい。こっちの方がかなりの孤立死が救えよう。

窪田順生氏のプロフィール:

1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)がある。


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