1974年、米国の社会学者フィリプスがニューヨークタイムスに掲載された自殺記事と、全米自殺結果件数を20年間分比較したところ因果関係があることを見つけ、読んだ若者が自殺をしたと報告があるゲーテの「若きウェルテルの悩み」から「ウェルテル効果」と名付けた。
そんなのこじつけだろというが、実は似たような現象は日本でも起きている。
例えば、1986年、当時人気アイドルだった岡田有希子の自殺をマスコミが連日のように報道したところ、若者の後追い自殺が多発。翌年まで青少年の自殺は3割増となった。
日本の自殺者はここのところ年間3万人という水準だが、実は1997年までは2万人台を推移していた。1998年に急に1万人弱急増したのである。専門家はバブル崩壊の影響がじわじわやってきたというが、これこそこじつけという気がする。
では、このあたりに何があったのか。97年の流行語は「失楽園(する)」。ご存じのように、不倫カップルが心中をする物語である。つまり、「心中しちゃう?」が流行語だったわけだ。さらに翌98年には人気バンドグループ「X」のメンバーだったhideが首つり自殺した。岡田有希子の時ほどではないがマスコミは大きく報じ、後追い自殺したファンもいた。
メディアが不安を煽(あお)ると、その不安が現実のものとなる――。これは私の個人的な見解ではない。WHO(世界保険機構)が「自殺を予防する自殺報道のあり方」という勧告も出しているのだ。
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