なぜこのタイミングで出版社を立ち上げたのか――南原竜樹さんの考え方遠藤諭の「コンテンツ消費とデジタル」論(1/5 ページ)

» 2012年03月21日 15時37分 公開
[遠藤諭,アスキー総合研究所]
アスキー総研

「遠藤諭の『コンテンツ消費とデジタル』論」とは?

 アスキー総合研究所所長の遠藤諭氏が、コンテンツ消費とデジタルについてお届けします。本やディスクなど、中身とパッケージが不可分の時代と異なり、ネット時代にはコンテンツは物理的な重さを持たない「0(ゼロ)グラム」なのです。

 本記事は、アスキー総合研究所の所長コラム「0(ゼロ)グラムへようこそ」に2012年3月16日に掲載されたコラムを転載したものです。遠藤氏の最新コラムはアスキー総合研究所で読むことができます。


左の『痛快! クルマ屋で行こう!』は、学生時代から外車の並行輸入を手がけ、フェラーリF40を2億円で売り、ローバーの販売権を手に入れるまでを綴った、文字通り痛快な南原竜樹氏の処女作。右の『「絶対無理」なんて「絶対」ない!』が、出版業界参入の理由を語った近著

 「新会社設立のご挨拶」という題名のメールが届いたのは、2011年11月のことだった。こんなビジネスに関するお知らせや派手なパーティの案内が、この方から届くことは珍しくなかった。どなたの話かというと、外車輸入からディーラー、インポーターと手掛け、日本テレビの『マネーの虎』で有名になった南原竜樹氏である。しかし、その日のメールの中身を見て、私は「えっ」と思わず声に出してしまった。

 この度弊社オートトレーディングルフトジャパン株式会社のグループ会社を新しく立ち上げる運びになりましたのでご案内させて頂きます。

 何の会社かと申しますと、出版社となります。

 この逆風といわれている業界に、私が新風を吹き込んで、出版業界全体を元気にしたいと考えております。

 出版社をいま設立するというのが驚きだが、わざわざ「逆風といわれる業界に」と断り書きのように入っている。説明するまでもなく、出版業界の市場規模は1996年をピークに、長期に渡って右肩下がりの縮小が続いている。一方で、今年春にはAmazonの電子書籍端末「Kindle」の日本語版が登場すると言われている。不況と新勢力に板ばさみになって、風雲急を告げているのが出版業界である。

 そんな出版業界に、本の作り方から書店で売るという流通の部分まで、あえていままでのスタイルを踏襲して、「紙の本」をこれから出していきますというのである。

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