アップルの秘密主義は、社員にとって幸せなのかインサイド・アップル(4)(4/5 ページ)

» 2012年03月21日 08時00分 公開
[アダム・ラシンスキー,Business Media 誠]

 アップルの文化はグーグルの対極だ。グーグルでは、スキーツアーから有名作家のシリーズ物の紹介まで、課外活動を告知するチラシがあらゆるところに掲示されている。これに対してアップルでは、iTunesチームが音楽バンドを支援したり、社員用のジム(ただし有料)もあったりはするが、出社した社員はだいたい仕事だけをしている。

 「打ち合わせでも、週末をすごした湖畔の別荘の話なんてしない」。ある上級エンジニアは振り返って言う。「すぐに仕事の話を始めるんだ」

 アップル以外の世界とのちがいは歴然としている。

 「ほかの会社の人たちとやりとりすると、相手には集中力が足りないと感じるよ」。同じエンジニアは言う。「アップルでは、みんな全力で仕事に打ちこんでいるから、帰宅してもアップルのことを忘れない。アップルでしている仕事が、その人にとって真の宗教なんだ」

 仕事に対するこういう態度は何十年と変わっていない。ジョブズがアップルの職場環境をどう考えていたかについて、ジャーナリストのジョー・ノチェラが、1986年のエスクァイア誌に次のように書いている。

 たとえば、ジョブズはよくアップルを「とんでもなくすばらしい」職場にすると語っていたが、それは魅力的な特典や手厚い福利厚生を指しているのではなく、社員がそれまでの人生で体験したことがないほど長時間、懸命に働く環境を作るということだった。それまででもっとも厳しい締め切りのプレッシャーのもと、身がすくむほどの責任を負い、休暇もとらず、週末すらめったに休まず……それでもかまわないような環境を作ることだ。むしろそれが大好きになり、やがて仕事と責任と厳しい締め切りなしでは生きられなくなる。同席していた社員たちはみな、仕事についてそんな感情を味わったことがあった。胸がわくわくし、自分にとって大切で、親しみすら覚えるような感情を、スティーブ・ジョブズの下で働いていたときに味わっていた。アップルの社員は、自分たちだけの仕事の歴史を共有している。それが彼らの絆であり、アップルにいたことのない者には理解できないものだった。

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