“私的援助”にみる市場原理ちきりんの“社会派”で行こう!(3/3 ページ)

» 2012年03月19日 08時00分 公開
[ちきりん,Chikirinの日記]
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(4)手頃な距離感

 日本の私的援助市場では、同じ子どもでも、アフリカの子どもよりアジアの子ども、中国の子どもよりはカンボジアの子ども、日本国内の子どもよりは海外の子ども、の方が競争力があるようです。

 アジアはアフリカより身近だし、中国は何となくイヤだけど「カンボジアはアンコールワットも素敵だったから助けてあげたい」という感じでしょうか。

 国内の寄付対象者は、情報管理が難しいことも不利な点です。例えば、難民キャンプに援助しても、援助物資の一部は横流しされてしまいます。しかし、それは日本からは見えません。

 一方、日本で誰かに寄付すると、その人が「ビールを飲んでいた!」「タバコを吸っていた!」とか、ひどいときには「楽しそうに笑っていた!」とまで、マスコミが騒ぎ立てます。

 これにより、それらの被援助者は一気に競合優位性を失います。海外の難民キャンプへの寄付だって、相当程度が関係者のタバコ代や洋酒代に消えていると思いますが、それは寄付者には見えないので、とても有利です。

本当の弱者とは……

 このように、この市場は残酷なまでに厳しいマーケットメカニズムで動いています。勝ち残っていくためには、上記のような傾向を踏まえ、「みすぼらしく純粋な子どもを前面に出し、できる限り目的を教育とヒモ付け、情報管理(マスコミ対策)に細心の注意を払うこと」が重要なのです。

 本当の弱者とは「私的援助市場でさえ弱者である人たち」なのかもしれません。

 そんじゃーね。

著者プロフィール:ちきりん

兵庫県出身。バブル最盛期に証券会社で働く。米国の大学院への留学を経て外資系企業に勤務。2010年秋に退職し“働かない人生”を謳歌中。崩壊前のソビエト連邦など、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。著書に『自分のアタマで考えよう』『ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法』がある。Twitterアカウントは「@InsideCHIKIRIN」。

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