コラム
» 2012年03月19日 08時00分 UPDATE

ちきりんの“社会派”で行こう!:“私的援助”にみる市場原理 (1/3)

政府などが配分を決める公的援助とは異なり、個人が援助先を直接選べる“私的援助”。そのため、援助先は偏りがちになりますが、私的援助を集めやすい分野にはどのような特徴があるのでしょうか。

[ちきりん,Chikirinの日記]

「ちきりんの“社会派”で行こう!」とは?

はてなダイアリーの片隅でさまざまな話題をちょっと違った視点から扱う匿名ブロガー“ちきりん”さん。政治や経済から、社会、芸能まで鋭い分析眼で読み解く“ちきりんワールド”をご堪能ください。

※本記事は、「Chikirinの日記」において、2010年8月10日に掲載されたエントリーを再構成したコラムです。


 世の中にはさまざまな“市場”がありますが、規制がまったくなく、マーケットメカニズムのみで動いている市場の1つが「私的援助市場」です。

ah_tiki1.jpg 個人寄付金額の推移(出典:中央三井信託銀行)

 ちなみに公的援助とは社会福祉のことで、こちらは“公”ですから市場原理は適用されません。しかし、私的な援助市場、例えばボランティアや寄付など人々の自発的な支援や寄付の分野においては、誰がその寄付や援助を獲得できるか、ということは、完全に市場原理で決まります。

 例えば、「大人VS.子ども」で考えてみましょう。公的な援助(社会福祉)は高齢者に手厚いですが、私的援助は圧倒的に子どもに有利です。

 難病の子どもの海外での臓器移植のためであれば、時には1億円の寄付が集まります。しかし、難病の中高年がいくら貧困にあえいでいでも、国内での臓器移植のために、1億円の100分の1に過ぎない100万円でも集めるのは至難の業です。これは私的援助市場において、「子どもは大人より圧倒的に競争力がある」ことを示しています。

 世界の難民のために毎月一定額の寄付をする人が、日本のホームレスに毎月、同額を寄付する人より多いとすると、「難民キャンプの飢えた人々は、日本のホームレスより、私的援助市場において強者である」と言えます(例なので反対かもしれません)。

 また、なぜか日本の私的援助市場では「カンボジア」は非常に競争力が強いように思えます。以前、「寄付を募ってカンボジアに学校を建てよう」と訴えたテレビ番組がありました。この企画、日本のどこかに障害者施設を建てようという話より、スポンサーや視聴者が付きやすいのではないでしょうか。そうであれば、「カンボジアの学校は、日本の障害者施設より私的援助市場において競争力がある」わけです。

 どこに自分の寄付金や労力を譲渡したいかという具体的な選択は、個々人によって異なります。市場ですから、全員の意見が完全に一致することはありません。

 しかし、参加者それぞれの意思表明により、市場全体としては「より強いモノ」と「より弱いモノ」がランク付けされます。そして、強者は弱者よりも、金銭的・非金銭的な寄付を「より獲得しやすい」状態になります。

 そして、この市場には何の規制もありません。国際条約も規制も監督官庁もない完全な自由市場であり、人は「自分が援助したいもの」を任意に選べます。「より貧しい人から順に寄付を配分される権利がある」などというルールは存在しないのです。

 このため援助を勝ちとるには、マーケティングやコミュニケーション・ストラテジーが必要となり、また「寄付をする人の中でどのセグメントを狙うべきか」などの戦略も重要です。

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