「激安婚は幸せな結果を招かない!?」――絆ブーム下のブライダル業界がやるべきこと嶋田淑之の「リーダーは眠らない」(5/5 ページ)

» 2012年03月16日 08時00分 公開
[嶋田淑之,Business Media 誠]
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怖いのは『披露宴をしないのがカッコイイ』というパラダイムシフト

 2011年12月期までにゲストハウス(再生施設含む)とドレスショップを全国に45店舗展開し、今年度以降も再生施設を含むゲストハウス4店舗、ドレスショップ2〜3店舗ずつ、毎年出店していく計画だという。アジア市場への本格展開も視野に入れつつ、今は日本国内の人口30万人以上の地方中核都市を中心に展開していくと、浅田さんは意気盛んだ。

 成長戦略の基本は、市場深耕と新市場開拓のバランスのよい推進。新市場開拓戦略に関して、浅田さんはこんな抱負を述べる。

 「それぞれの地域におけるクオリティナンバー1になることを目指しています。人口30万人の都市だと、年間3000組の挙式や披露宴があります。弊社としてはその中の上位5%、すなわち150組を取ることができればそれで十分ですし、それは実現できると考えています」

 一見、隙のない戦略展開をしているようにも見えるノバレーゼだが、将来の環境変化に関して、脅威を感じることはないのだろうか?

 「これまで挙式・披露宴の費用の多くを親が出してきましたが、『10年後の親の世代にそれだけのお金があるのか』という点は非常に懸念されます。

 また、ブライダルはその時代のトレンドを大きく反映するので、例えば大ヒットした映画やテレビドラマなどを通じて、『披露宴をしないのがカッコイイ』というパラダイムシフトが起きる可能性は否定できませんし、それは大きな脅威となります」

 そして、現在のノバレーゼの強みと言うべき、「従業員満足至上主義+顧客満足至上主義」に関しても、思わぬ課題を吐露する。

 「面白いことは何でもやろうという社風はとても良いと思っているのですが、ちょっとラテン的過ぎるというか、ノリが良すぎる面もあるかなと思うことはあるんですよ」と笑う浅田さん。確かにイノベーティブなサービスの創造と、リスクを回避ないしは軽減するための統制とは、どんな業種のどのような企業においても、相互に対立し、矛盾しがちである。統制が強まれば創造性は減退し、創造性を追求すれば統制が緩むということは往々にしてある。

業務改革提案制度の結果、2011年夏には海の家を出したが5000万円の赤字になったという

 しかし、少なくとも現在のノバレーゼを外から見る限りは、時として失敗もあるのかもしれないが、創造と統制のバランスは取れているように見える。問題は今後、業容が拡大していった時、それでも、そのバランスを維持できるかどうかだ。

 浅田さんのかじ取りやいかに? これからも挙式・披露宴の出席者たちに、そして何より夢あふれる新郎新婦に「まさか、そこまでしてくれるとは思わなかった」という驚きと感動を与えてほしいと願うばかりだ。

嶋田淑之(しまだ ひでゆき)

1956年福岡県生まれ、東京大学文学部卒。大手電機メーカー、経営コンサルティング会社勤務を経て、現在は自由が丘産能短大・講師、文筆家、戦略経営協会・理事・事務局長。企業の「経営革新」、ビジネスパーソンの「自己革新」を主要なテーマに、戦略経営の視点から、フジサンケイビジネスアイ、毎日コミュニケーションズなどに連載記事を執筆中。主要著書として、「Google なぜグーグルは創業6年で世界企業になったのか」「43の図表でわかる戦略経営」「ヤマハ発動機の経営革新」などがある。趣味は、クラシック音楽、美術、スキー、ハワイぶらぶら旅など。


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