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» 2012年03月16日 08時00分 UPDATE

嶋田淑之の「リーダーは眠らない」:「激安婚は幸せな結果を招かない!?」――絆ブーム下のブライダル業界がやるべきこと (1/5)

近年、“地味婚”や“激安婚”が増えていると言われるようになっており、ブライダル業界でもその流れに対応したプランなどを提供するようになっている。しかし、ブライダル企業のノバレーゼで社長を務める浅田剛冶さんは「激安婚は幸せな結果を招かない」と主張する。その主張の背景にあるものとは。

[嶋田淑之,Business Media 誠]

嶋田淑之の「リーダーは眠らない」とは?

 技術革新のスピードが上がり、経済のグローバル化も進む中、日夜、自らの組織のために粉骨砕身するリーダーたち。彼らはどんな思いを抱き、どんなことに注目して、事業を運営しているのでしょうか。「リーダーは眠らない」では、さまざまな企業や団体のトップに登場していただき、業界の“今”を語ってもらいます。

 インタビュアーは戦略経営に詳しい嶋田淑之氏。徹底した聞き取りを通して、リーダーの心の内に鋭く迫ります。


 東日本大震災は日本人の意識やライフスタイルに大きな影響を与えたと言われるが、昨年巻き起こった、いわゆる「絆ブーム」もその1つである。家族や大切な仲間たちとの関係性を大事にする価値観が改めて脚光を浴び、それまでの非婚化・晩婚化の流れに逆行するような「絆婚」と呼ばれる婚姻スタイルも広がったかのように言われた。

 現実には世間を覆う自粛ムードもあって婚姻数は減少したのだが、未婚の人々の間に結婚に対する願望が高まっていることは間違いないようだ。

ah_simada1.jpg 人口動態総覧年次推移(出典:厚生労働省)

 震災から1年。これから結婚しようと考えている人々は今、どのようなことを望んでいるのだろうか? 

 特に女性にとって挙式披露宴は「一世一代の晴れ舞台」で、特別な思い入れを持った人が多いのは言うまでもない。しかし、彼ら彼女たちの思いを受け止める立場にある日本のブライダル業界は、急速に進む環境変化の下で、そうした思いを実現し得るサービスを提供できているのだろうか?

 そんな疑問を解消すべく、今回はハウスウエディングというバブル崩壊後の新スタイルの婚礼ビジネスに取り組んで躍進するノバレーゼの浅田剛冶社長(42歳)にお話をうかがった。浅田さんは、慶應義塾大学商学部を卒業後、リクルート勤務を経て、20代で実家の結婚式場(シャンテ)を継ぎ、売り上げを5倍に伸ばすなど経営革新に腕を振るったが、2000年に自らワーカホリック(現在のノバレーゼ)を創業した。

 市場規模1兆5000億円と言われながらも、少子化、長期不況という環境下、持続的な停滞ないしは漸減傾向にあるブライダル業界にあって、同社は婚礼プロデュース、婚礼衣裳、ホテル・レストランという3つのビジネスを柱に業容を拡大。国内各地だけでなく海外にも店舗展開し、2006年には東証マザーズに株式を上場(2010年、東証一部に市場変更)。売り上げは業界11位に位置し、その中で設立年度は最も新しい。

ah_simada2.jpg ノバレーゼの浅田剛冶社長。ガンダムファンのため、自身の結婚式をガンダム風にやろうとしたが親族の反対で断念したという

ブライダルスタイルの変化

 大阪出身の浅田さんは常にハイテンションで、声も大きく、快活で早口だ。「私はラテン系なものですから」と笑いながら、日本のブライダル市場をめぐる環境変化を解説してくれた。

 「披露宴は、もともと親が子どもの結婚を世間に披露する場でしたから、お金を出すのはもちろん、挙式・披露宴の場所の選定や内容にも親が強い発言力を持っていました。

 しかし、1991年のバブル崩壊後、個人の価値観は変化し、挙式・披露宴においても、新郎新婦は社会的なしがらみより自分たちの個性を優先するようになり、それに伴って、主導権も新郎新婦側(特に新婦)に移り、仲人も立てなくなりました。

 リゾートウエディング(とりわけ海外ウエディング)の流行がその典型で、リゾートから戻った彼らは、お披露目のためにレストランでパーティを開くようになりました。しかし、レストランだと婚礼の専門スタッフもいませんし、設備面で使い勝手が良くないこともあって、主流にはなり得ませんでした。

 そこに、旧来型のホテルや結婚式場の充実した設備と、レストランの貸し切り感や本格的料理という双方の良さを複合させたスタイルとして、一軒家を借り切るハウスウェディングが誕生し、急速に伸びていったわけです。

 今や、結婚披露宴は親が子どもの結婚を世間にお披露目する場ではなく、新郎新婦がホームパーティ感覚で、自分たちの個性を発揮しつつ、大切にしている仲間や友人たちをおもてなしする場になったのです」

 実際、結婚情報誌『ゼクシィ』(リクルート発行)のデータを見ても、1996年から2010年までの15年間に、首都圏における披露宴に占めるホテルのシェアは50%弱から31.5%に減り、一般の結婚式場は3割弱のまま停滞、レストランも10%前後で停滞している。その一方、ゲストハウス※は、ほぼゼロに近い状態から18.4%にまでシェアを伸ばしている。

※ゲストハウス……邸宅風ウエディングを行うための専用施設。邸宅(庭も含む)を丸ごと一軒借り切って挙式や披露宴を行う点に特徴がある。ホテルや結婚式場よりプライベート性が高く、レストランより設備が整っているため、二人らしい、ゲストの満足度も高い式ができると言われる。

 レストランでの披露宴に制約があることは分かるにしても、ホテルや結婚式場といった、数十年にわたって日本の挙式・披露宴をリードしてきた存在が、この15年間、環境変化に対応することなく衰退ないし停滞しているのは理解し難いことだ。しかし、実はそこには、我々には知ることのできない業界特有の問題が隠されているようだ。

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