コラム
» 2012年03月16日 08時00分 UPDATE

店で「おあいそ!」と言うオヤジに、新人教育ができるのか? (1/2)

研修で学んだ受講者にとっての最大の難関は、学んだ内容と異なることが行われている現場であり、学んだことを実践させない上司である。「おあいそ!」という言葉から、ビジネスマナーについて改めて考えてみた。

[川口雅裕,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール

川口雅裕(かわぐち・まさひろ)

イニシアチブ・パートナーズ代表。京都大学教育学部卒業後、1988年にリクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報(メディア対応・IR)および経営企画を担当。2003年より株式会社マングローブ取締役・関西支社長。2010年1月にイニシアチブ・パートナーズを設立。ブログ「関西の人事コンサルタントのブログ


 「おあいそ」は、もともと飲食店で使われる隠語で、勘定の際に「愛想なしで(行き届かなくて)申しわけありませんでした」と表現するようにしていたところから来ている。お客さんからお金をいただき、お見送りする際のビジネスマナーと言って良い。

 しかし、これを客の方から言ってしまうと、「愛想を尽かしたから、もう精算してくれ」「カネを払うから、愛想をせい」といった意味になってしまう。だから、大きな声で「おあいそ!」と言うオジサンと、「〆て」「会計して」「チェックして」「勘定して」「いくら?」などとスッと言うオジサンでは、何かレベルの違いを感じざるをえない。

 もちろん言葉には移り変わりがあり、「おあいそ」も今や単に「計算して」という意味合いになっているのだから、そんな小さなことに目くじら立てるのはオカシイという考え方も分かる。しかし、ビジネスでは、違和感を覚える人がいるなら無視できない。「……で、よろしかったでしょうか?」に対する批判をコンビニやファミレスが無視できなかったように、「おあいそ」も取引先との会食などがあるビジネスパーソンにとってどうでもいいことではない。

 調べてみると、「……で、よろしかったでしょうか?」は北海道や東北の方言であるとか、文法的には間違っていない(婉曲表現としての過去形)という話もあるようで、単なるとらえようとも言えるのに対して、後者は語彙(ごい)や相手への心遣いに関わる問題であり、格好の悪さという点では「おあいそ」が上のように思える。

 4月になると、ほとんどの会社で新入社員たちがビジネスマナー研修を受講する。電話応対や言葉遣いや接遇、名刺交換や身だしなみなどが定番のコンテンツだが、業界や職種の違いがあるので、そのまま実践したら、顧客や職場が違和感を覚えるようなことがある。そこで相手がどう感じているかを把握し、修正することが求められる。

 一般的な常識や定型を身に付けたところで、前提として「相手がどう思うか」という視点とそれを感じる感性がなければ学んだことを効果的に実践することはできない。その意味で、取引先の感じ方や店側の気分を害することを考えない「おあいそ」は、ビジネスマナーの精神を否定しかねない言葉だ。

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