“広告新聞”じゃダメ、こんなニュースサイトが欲しい!郷好文の“うふふ”マーケティング(2/3 ページ)

» 2012年03月15日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

“新聞広告”なのか“広告新聞”なのか?

 「2010年3月の時点ですが、広告とニュースのバランスを調べたことがあります。普通の画面(XGA=1024×768サイズ)でスクリーンショットを撮って面積を測る。広告は多いサイトで40%以上、少ないサイトでは12%ほどでした。ニュース領域はその逆で、広告が4割を越えたサイトでは3割以下、平均しても3〜4割ほどです」

大手新聞Webサイトの広告面積、長谷川恭久さん制作

 スクロールダウンすればもちろん記事領域は増えるが、これではまるで“広告新聞”。

 「一方、Yahoo!ニュースでは広告は1割、ニュースが6割。しかもニュースソースは複数からで読者の利便性は高いと思います。広告は無いと運営ができません。ただ、今の広告やキャンペーンは『出稿→クリック→いいね!→ページビュー増えた→良かったね』で終わり。見た人が欲しいと思った時、どうできるか? そこを詰めないといけない」

 例えば、製品広告の中で販売まで完結させる、セミナー紹介広告の中で申し込みできる……というのなら違ってくる。「Web運営にマーケティング系の人ばかりではなく、カスタマー・サービスの部署の人を入れると読者視点が増す」と長谷川さんは語る。彼はWebを収入モデルから変えるコンサルタントでもある。

 これだけ広告が多ければ黒字かと思われるが、実際は課金モデルでつまずき、収入が伸びないのが実情。彼に「ニュースサイトの成功モデルは?」と聞くと、大赤字だった誌面が劇的に黒字化した次のWebサイトを挙げてくれた。

赤字を脱却したThe Atlantic

 それは米国のサイト「The Atlantic(外部リンク)」。

 トップに大きな画像、右上は新着ニュースの紹介。左コラムは最新ニュースが連なり、真ん中には「読者はどう思う?」のクロストーク、その下のVoiceは署名記事、「読み逃してない?」も便利だし、In Focusは写真がすばらしい。

 19世紀に創刊された歴史あるThe Atlanticは、過去10数年にわたって赤字にあえいでいた。だがオーナーが気鋭の編集者を招いて「紙と電子の両媒体の同時改革」をしたことで、オンライン版も印刷版も広告収入が増加した。主なポイントは次の通り。

  • 会計情報(赤字状況)を社員に知らせる
  • 編集部門と業務部門の壁を壊す
  • 印刷とデジタルの両方の広告を取る

 会計情報の開示は、危機感の共有と一体感の醸成のため。部門の壁を壊す定期ミーティングで誌面のアイデアがわいてきた。広告主に印刷とデジタルの両方の広告を勧めた。両誌面への掲載で相乗効果が生まれると説得したのだ。

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