なぜ顧客に愛される? 大垣共立銀行が共有するサービスの定義(1/2 ページ)

» 2012年03月14日 08時00分 公開
[松井拓己,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:松井拓己(まつい・たくみ)

ワクコンサルティング株式会社執行役員・チーフコンサルタント。名古屋工業大学産業戦略工学専攻修了後、大手化学工業品メーカーで商品企画開発に従事。その後、事業開発プロジェクトのプロジェクトリーダーとして、問題分析手法を活用した業務改革テーマの創出や、サービスサイエンスを取り入れた新規事業戦略立案に貢献。現在はサービスサイエンスおよび新規事業開発を中心に支援を行っている。


 今回取り上げる大垣共立銀行は、日本経済新聞による金融機関の顧客満足度ランキングで2011年は総合1位(ネット系銀行を除く)、2012年はトップ10入りし、地銀では1位に輝いた岐阜県の地方銀行です。この大垣共立銀行は、岐阜県内シェア44%、大垣市シェア82%という地元密着型の銀行で、すばらしいサービスで差別化していることでも有名です。

大垣共立銀行公式Webサイト

 それではまず、具体的にどんなサービスを行っているのか、その一例を挙げてみたいと思います。

  • 全国初のキャッシュコーナーの365日年中無休稼働。定休日を気にせず利用できる
  • 移動ATM「ひだ1号」。銀行機能をのせたバスが過疎地域を巡回してくれる
  • ドライブスルーATM。わざわざ車を降りずにATMを利用できる
  • ATMに説明スタッフ配備。不慣れなご老人などに何度でも親切に対応してくれる
  • 商談でリラックスできるように、高齢者には和風、奥さまにはキッチン風の商談室が用意されている……

 このようにすばらしいサービスを提供している大垣共立銀行ですが、銀行のサービスを変革することがなぜできたのか。そのヒントは、頭取の土屋氏の掲げた「我々は金融業ではなくてサービス業だ」という言葉にあります。自らを「サービス業」と定義することは、スタッフひとりひとりの意識を変え、組織一丸となってサービス変革を推進するためには、極めて効果的なのです。

 サービスサイエンスでは「すべての産業はサービス業である」ととらえています。つまり、銀行以外にも製造業や農業、物流業、医療、学校など、すべてはサービス業だという視点でとらえ直すことができるのです。「我々はサービス業だ」と認識することで、CS向上やサービス改革のヒントが見つかる企業はまだまだあるのではないでしょうか?

 しかし、ただ単に「我々はサービス業だ」と掲げるだけで改革が実現できるというわけではありません。実はサービス改革のためには、「サービスの定義」自体を組織で共通認識として共有することが極めて重要になります。

 ところで、「サービス」とは何なのでしょうか? いざ聞かれてみると、案外回答が難しいものです。

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