解熱剤で熱を下げれば、治りは早くなるの?大往生したけりゃ医療とかかわるな(6)(2/4 ページ)

» 2012年03月13日 08時00分 公開
[中村仁一,Business Media 誠]

一、自然治癒の過程を妨げぬこと

 例えば、発熱を考えてみましょう。

 ふつう熱が出ると、これは大変だと目の敵にして下げようとします。また、高熱だと頭がおかしくなるのではないかと考えて大騒ぎします。

しかし、熱の高さと重症とは関係ありませんし、頭がおかしくなることもありません。高い熱が出た場合、頭のおかしくなる脳炎や脳膜炎が混じっていることもあるというにすぎません。

 細菌やウイルスの感染時の発熱は、敵の力を弱めて早く治そうとする人体の反応と考えるべきものです。ですから、解熱剤を使って無闇に熱を下げるのは利敵行為になり、かえって治りが遅れると考えなくてはいけません。

 しんどいのは熱のせいではなく、熱の出る原因のせいなのです。熱は原因ではなく結果です。熱を下げても、原因がなくなるわけではありません。熱でしんどいといっても、細菌やウイルスの方がもっとしんどいはずです。

 ただし、熱に弱い性質の人もいます。熱を下げてやれば食欲も出るという人は、治りが多少遅くなるのを覚悟のうえで、解熱剤を使うのも止むを得ないでしょう。

 前述のように、発熱は身体の反応であり、必ずしも重症の証ではありません。それよりも微熱過程でも、否、平熱であっても食欲がなく、ぐったりして、普段と違って絶えずうとうとしているようなら、かなり重症と考えなくてはいけません。

 ある年寄りは、老人ホームへ移って間なしに微熱で、少し咳もしているぐらいの症状でした。軽く風邪と考えていたら、いきなり意識障害が出て、病院へ連れて行ったらひどい肺炎といわれた苦い経験が私にはあります。

 年寄りは若者と異なり、局所の症状が乏しいのです。それ以来、ぐったりしている、生気が失せている、傾眠がちなどは、重要な注意信号として、気をつけるようにしています。

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