安さだけじゃダメ!? 利便性追求が小売の未来を分ける藤田正美の時事日想(1/2 ページ)

» 2012年03月12日 07時59分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 先日、ある大手家電量販店のオンラインショップで買い物をした。あえて社名は伏せるが、今、一番元気の良い量販店と言えば誰でも分かるだろう。実際のお店は何度も利用したことがあるが、オンラインショップで買うのは初めてだった。アマゾンはずいぶん利用しているが、クレジットカードの情報などをあちこちに登録したくないこともあって、そのほかのオンラインショップは利用しなかったのである。

 買ってはみたもののお店から何の連絡もない。会員ページに行ってみても「出荷準備中」としか書かれていないし、注文して何日か過ぎても新しい情報は何もない。とうとうたまりかねて電話をしてみる。経験のある方はお分かりだろうが、このサポート電話というのはなかなかつながらないのが普通だ。この社も「ただいま回線が混み合っております。しばらく時間をおいてお掛け直しください」とそっけないテープの返答が返ってくるばかり。

 何度か繰り返し試みるうち、ようやく電話がつながった。そして回答は「お取り寄せ商品になっておりますので、1週間から2週間かかることがあります」とのこと。在庫が必ずあるわけではないことは百も承知しているが、その後どうなっているのかという情報がまったくないのはいかがなものだろうか。それがこの量販店のオンラインショップを利用した印象である。

 オンライン書店として始まったアマゾン。サービスを開始してからすでに16年以上にもなる。当初はいつつぶれてもおかしくない状態だったし、創業者のジェフ・ベゾス氏の一貫した強気は別にして、投資家の評価もいろいろ分かれていた。しかし結果的には日本の市場においてすらオンライン書店部門ではアマゾンの圧勝である。そしていまやアマゾンは生鮮食料品や医薬品以外は何でも売っていそうだと感じるくらい商材を広げている。

 アマゾンを利用していてよく思うのは、注文した商品がいつ届くのかという情報がアカウントサービスという形で流されていることだ。もちろん発送すれば発送したという通知がメールで流れるし、配送中の荷物がどこにあるのかも追うことができる。注文した商品が入荷しないことが分かればもちろんメールが来る。これまで幸いなことに商品(といってもほとんどは書籍)でトラブルが起きたことはない。

 これが実はオンラインのメリットだと思う。一昔前だったら、店頭で注文して頭金なり証拠金をいくらか払い、お店から連絡が来るのをじっと待つというのが一般的だった。しかしオンラインである今、注文した商品がどこにあるのかはだいたいの場合、人の手をわずらわせることなくすぐに確認できる(ただし、「オペレーターとおしゃべりする楽しみがなくなった」と嘆く人はいるかもしれない)。

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