首都圏で大地震は発生するのか? 分かったこと・分からなかったこと東大地震研究所の平田直氏が語る(4/5 ページ)

» 2012年03月09日 15時45分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]
東京地震以降、M7クラスの地震

 その画像を見て、プレートがどこにどういう形で沈みこんでいるのかが分かるようになりました。例えば、フィリピン海プレートはこれまで考えられてきた深さよりも、実は10キロメートルも浅いことが分かりました(想定される震源の深さが従来の30キロから20キロへと約10キロ浅くなることが判明)。これは年数とともに徐々に浅くなったというわけではありません。「深いと思っていたものが、実際は浅かった」ということです。

 このプレートの位置がなぜ重要なのかというと、同じMの地震があった場合、揺れが違ってくるから。今回のようにフィリピン海プレートの深さが浅いということが分かったことで、同じMの地震でも首都圏では揺れが大きくなることが予想されます。

 「今後30年以内にM7クラスの地震が、首都圏で発生する確率は約70%」と言われています。この計算は1894年に起きた「東京地震」以後、首都圏でM7クラスの地震が5つ※も発生したことに基づいています。しかし、この5つの地震がどこで発生したのかなど、よく分かっていませんでした。5つの地震はフィリピン海プレートの上なのか中なのか、それともフィリピン海プレートと太平洋プレートの間なのか。または太平洋プレートの中なのか。

※5つの地震:1894年東京地震、1895年と1921年の茨城県南部、1922年浦賀水道付近、1987年千葉県東方沖

 古いデータを解析した結果、次のことが分かりました。1894年の東京地震はフィリピン海プレート内部または太平洋プレート上面で発生した。1895年の茨城県南部地震は太平洋プレート内部で発生した。1921年の茨城県南部、1922年の浦賀水道付近の地震はフィリピン海プレートの内部で起きたことが分かりました。この5つの地震以外、つまり安政江戸地震については記録が残っていないので、まだ未解決です。

新しいプレート構造で、東京湾北部地震の揺れを計算した(左)、2004年に中央防災会議により計算された速度分布(右)

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