そればかりか不届き者も目立つ。列車の廃止となればホームからあふれんばかりに身を乗り出して撮影し、危険区域に立ち入ろうとする。そこまでしなくても、立ち居振る舞いだけで、他の客に不快な思いをさせたり目障りだったりする。
鉄道ファンが不注意で事故を起こし痛い目に遭っても自業自得だが、鉄道会社としては看過できないので、警備員を雇ったり、駅員を増員したりと経費をかけなくてはいけない。そうして配慮したにもかかわらず、警備員が撮影の邪魔だと罵声を浴びせたりする。格安切符のくせに“オレは上客だ”という態度で誤った規則の知識を振りかざす。
これが他のオタク趣味であれば、多少のクレームがあっても「(直接お金を払ってくれた)お客さんだから……」と納得できよう。しかし鉄道会社は我慢するだけ。本当にお気の毒である。
ファンと対象が良好な関係を持つ。そこに趣味の喜びがあるはずだ。鉄道ファンと鉄道会社の関係は、他の趣味に比べてどうもしっくりこない。でも、このままでいいわけがない。そこで最近は鉄道会社が鉄道ファン向けの取り組みを始めている。JR東日本が大宮に鉄道博物館を作って成功した頃から、各地の鉄道会社が鉄道ファン向けのイベントや施設の設置、オフィシャルグッズの発売を始めている。
また、鉄道模型や鉄道玩具の分野を中心に、意匠の有料許諾を始めているようだ。車輌や駅のデザインについて、国鉄時代は「国民の財産」として無償で提供された。国鉄がタダなら仕方がない……ということで私鉄も無償にしていた。しかし国鉄がJRという民間企業になってからは有償化の流れになりつつある。鉄道グッズの売り上げの一部が鉄道会社に還流されようとしている。鉄道ファンとしてはグッズの値段が高くなるので辛いところだが、これは認めなくてはいけない。
ファンのお金をコンテンツホルダーに還流する方策は「いかに商品を買ってもらうか」である。鉄道会社の場合は「商品=切符」である。しかし、切符を買ってくれないファンが多いから悩ましい。そんな鉄道会社のファン市場への取り組み、鉄道趣味ビジネスと鉄道会社との関係など、鉄道ファンのお金が鉄道会社に届くための事例については、今後も折に触れて紹介していきたい。
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