子供スキー教室から“強みから売り上げまでの連鎖”を学ぶ(1/2 ページ)

» 2012年03月06日 08時00分 公開
[荻野永策,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール

荻野永策(おぎの・えいさく)

株式会社ALUHA社長。Javaプログラミングができるマーケティング、営業戦略コンサルタント。1979年兵庫県西脇市生まれ。金沢工業大学でJavaを用いたソフトウェア加工学を学び、2001年情報処理学会北陸支部優秀学生賞を受賞。大学院を経てALUHAを起業。


 先日、SankeiBizに「【ビジネスのツボ】プリンスホテルの子供スキー教室」という記事がありました。

スキー人口の減少傾向が続く中、歯止めをかけようと、スキー場を運営するプリンスホテルが子供向けのユニークなスキー教室を開催している。最大の特徴は、スキー場であるにもかかわらず、雪のない屋内ゲレンデも設けてある点だ。いきなり雪上に立たせて、スキー嫌いになる子供が少なくないことに着目、「楽しくスキーを覚えてもらう」のがコンセプトだ。かつてスキーブームを担った世代が子供を連れてスキー場に戻ってきてもらうのが狙いで、苗場スキー場(新潟県湯沢町)に続き、今シーズンからは軽井沢スキー場(長野県軽井沢町)でも始め、集客に一役買っている。

 記事にあるようにスキー人口の減少による市場規模の縮小に歯止めをかけるべく、始めたのがこの子供スキー教室。特徴は下記の4つです。

1.屋内でできること

2.途中でめげない工夫

3.安全性と楽しさ

4.自然にスキーの楽しさやスキルを身に付けられる

 これらを支える強みが、プールを改造して作った屋内練習ができる設備と、楽しくスキーを学べるプログラムというノウハウです。プログラムは、記事内にも記載がありますが、「子供たちが途中でめげないようにプログラムを作ること」を重要視しているようです。

 この結果、スキー教室というお試し商品から、スキー場の利用というメイン商品への商品連鎖が生まれています。

子供が気軽にスキーを楽しめる(お試し品)

スキー場の利用(メイン商品)

 そして、この商品連鎖により、次の3つの成果を出しているようです。

 1つ目の成果は、1組当たり人数の増加です。宿泊施設である以上、1組当たりの宿泊客数が多くなれば売り上げは必然的に上がります。子供のスキー教室を提案したことで家族連れ、さらには祖父母の参加も増え、1組当たり人数が増加し、結果売上向上につながったというわけです。

 2つ目の成果は、客単価の向上です。1組当たり人数が増えると、当然、館内で使うお金の量も増えます。お土産や食事などですね。客単価が向上すると、当然売り上げも向上します。

 3つ目の成果は、記事には記載がないのですが利用回数の増加が見込めます。スキーといえば冬ですが、屋内で雪がなくてもスキーが安全にできるのが強みなので、夏などのオフシーズンでの提案もできるようになります。夏に行う子供向けスキー教室や、シーズン前に練習しておこうというようなプロモーションができるようになります。その結果、利用回数増加につながり、当然、売り上げも向上します。

 「子供が気軽にスキーを楽しめる(お試し品)」という商品戦略から、1組当たり人数の増加、客単価向上、利用回数増加という3つの効果を出しています。強みを生かしたすばらしい商品戦略だと思います。

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