ワクチンを打っても、インフルエンザにはかかる大往生したけりゃ医療とかかわるな(5)(2/3 ページ)

» 2012年03月06日 08時00分 公開
[中村仁一,Business Media 誠]

 一般的には、年をとればとるほど、また、重い持病があったり、免疫を抑えるなどの特殊な薬を飲んでいたりするほど、この反応する力は弱くなると考えられます。

 したがって、本当に、死亡や重症化の予防ができるのか、あやしくなってきます。

 また、なぜ予防はできないのかといえば、インフルエンザウイルスの進入門戸は、鼻やのどの粘膜だからです。ワクチンを打っても抗体ができるのは、血中であって、これらの粘膜ではありません。予防というのは、いわば、門の外で撃退する場合を指し、門を入って玄関を上がって座敷で初めて闘うような事態ではありません。

 さらには、現在の日本のワクチンは、インフルエンザの粒子全体を使うのではなく(全粒子を使うと副作用が強い)、2つある突起の一つ(HA)を切り離して抗原として使っています。このため、本物がやって来た時に、撃退できるのかという疑問もあります。

 以上のことから、ワクチンの接種は意味がないと思いながらも、世間の少数派のせいもあり、私自身は立場上、老人ホームに移ってからは、毎年接種し続けてきました。

 しかし、厚生労働省が政府広報で「打ってもかかる」と認めたので、大手を振ってやめることにしました。医療従事者優先でワクチンが回ってきましたが、当然打たず、他へ回しました。

 また、同広報には「ワクチン接種は、多くの方に重症化予防というメリットをもたらしますが、接種後、腫れたり、発熱の症状が出たり、まれに重篤な症状を引き起こす可能性もあります。この点をご理解のうえ、個人のご判断により接種を受けていただくようお願いします」ともあります。

 このシーズン中、インフルエンザで死んだ人が204人なのに対し、予防接種後に死んだ人が133人もいます(日本医師会雑誌、2010年12月号)。このうち、121人は60歳以上なので、持病(基礎疾患)を悪化させた可能性もあるのではないかと思われます。

 しかし、そのほとんどは、因果関係なしで片づけられています。この死亡者133人は、接種推定人口、2280万人強の0.0006%にあたるそうです。

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