TOKYO CULTURE CULTUREで新しいカルチャーを――プロデュースの裏側を聞く嶋田淑之の「この人に逢いたい!」(2/5 ページ)

» 2012年03月02日 08時00分 公開
[嶋田淑之,Business Media 誠]

“流行の半歩手前”のテーマ設定

 「テーマ設定の特徴ですか? あえて言うなら、好奇心の深堀り、そして好奇心のエンタメ化ですかね」とテリーさんは言い、こう続けた。「自分の直観で“流行の半歩手前”と感じるものということですかね……」

 イベントカレンダーを眺めつつ、テリーさんのこの言葉を私なりの理解で表現するならば、「一見使い古されたテーマに見えても、そこに今までとは一味違う、意外性のある切り口から光が当たったことで、新たなブーム到来を予感させるもの」がテーマとして選ばれるということだろうか。

 例えば「地方グルメ」。テレビや雑誌でお馴染みの各地の超人気産品を、トークショーを通じて改めて紹介するというのでは、あまりに月並みだ。テリーさんならどうするか、実際に手がけた事例を挙げてもらった。

 「鳥取県米子市には『ヨネギーズ』という米子名産のネギをテーマにしたゆるキャラがいます。今では珍しくもない地方都市のゆるキャラの1つなのですが、Twitterのフォロワーは1万人以上もいるんですよ。そこで、米子市長をお招きして米子の白ネギ400本を100人で食べるというイベントを企画しました。

米子市長も招いてトーク

 普段は脇役に甘んじているネギを主役にすえて、さまざまな料理を食べ、今まで気が付かなかったネギの魅力に開眼したという人も多かったのではないでしょうか? 

 料理だけではありません。米子市長と会場が一体となって『ネギ検定』をしたり、ヨネギーズと遊んだりと大盛り上がりしたのですが、Twitterでも随分話題になりました」

 たしかに、ありがちな“お国自慢”“グルメ自慢”イベントとは一味違うし、会場の熱気や興奮がほうふつされる。

ゆるキャラのヨネギーズを囲んで

 思うに、テリーさんがこうした切り口の企画を生み出し、それを成功させ得る要因として、次の2つが存在するのではないだろうか。

 1つ目は「どんなテーマに、どのように取り組んでいる人をゲストに呼ぶべきか」に関するテリーさん独特の鑑識眼で、2つ目は「ライブ当日にどんなイベント進行をすべきか」についてのテリーさんならではのアングルである。

トークライブに向いている人、向いていない人

 TwitterやFacebook、あるいはブログを眺めると、個人の場合、自慢や他者批判、愚痴の割合も高いが、テリーさんがトークイベントのテーマと出演者を考える際、そうしたワンウェイ・タイプのコミュニケーションをする人はトークライブに向いていないと考える。

 「1カ月に300人以上の方と名刺交換していますが、どんな方なのかはTwitterやFacebookなどを見ればすぐに分かりますよね。書いている文章がブランディングに名を借りた宣伝や自慢に見えてしまうような内容が多い人は、リアルのトークライブには向かないように感じます。

 私は仕事であれプライベートであれ、それを自分のライフワークとして、それに人生を賭けて取り組んでいる人、そして、そうした自分の生きざまを赤裸々にさらけ出している人にこそ心ひかれますね」

 中でもテリーさんが最近、特に魅力を感じるのが、故郷や今住んでいる土地といったつながりの中で、ほかの人々と力を合わせて誰か(あるいは何か)を応援し続けている人のようだ。それをあえてキーワードで表現するなら、「(共通体験を通じた)絆」「共創」「献身」「継続」といったことになるだろうか。

 しかし、そうやって魅力を感じたからといって、直ちに出演予定者になれるほど、トークショーは甘くない。そこには、厳しい条件が存在する。

 「やっぱり、まずは声の大きな人が良いですよ」と笑うテリーさんだが、必要な資質を次のように教えてくれた。

 「端的に言えば、エンタメ力のある人です。人前で堂々と、かつ楽しそうに話せるのはもちろんのこと、イベント魂というか、サービス精神が豊かで、そうした自分の特性をわきまえ、人を楽しませるのが好きで好きで仕方がないという人ですね。そして、もちろん、お店ですから集客力があるということも大事です」

 テリーさん独自の鑑識眼にかなった人がこうして選ばれ、トークショーの企画が具体化していくわけだが、その出演者やその人が追求しているテーマの魅力をライブ中にいかに引き出すかが、次に大事となる。テリーさんのワザがそこで光る。

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