コラム
» 2012年03月02日 08時00分 UPDATE

「人は常に坂に立つ」――生きる意味を考える (1/4)

『生命を捉えなおす』(清水博)・『動的平衡』(福岡伸一)の2冊、そしてベルグソンの言葉、『徒然草』の一話から「生命・生きること」について改めて考えた。

[村山昇,INSIGHT NOW!]
INSIGHT NOW!

著者プロフィール:村山昇(むらやま・のぼる)

キャリア・ポートレート コンサルティング代表。企業・団体の従業員・職員を対象に「プロフェッショナルシップ研修」(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)を行う。「キャリアの自画像(ポートレート)」を描くマネジメントツールや「レゴブロック」を用いたゲーム研修、就労観の傾向性診断「キャリアMQ」をコア商品とする。プロ論・キャリア論を教えるのではなく、「働くこと・仕事の本質」を理解させ、腹底にジーンと効くプログラムを志向している。


 「良い本」というのは、その本が扱うテーマをよく理解させてくれるのは当然ながら、そこで展開される観点を1つのレンズとして世界全体を見つめ直してみる時、より深い認識を与えてくれるものでもあります。

 その意味で『生命を捉えなおす』(清水博)、『動的平衡』(福岡伸一)の2つの本はとても「良い本」です。両書とも、これまでの科学が邁進(まいしん)してきた機械還元論的な生命観を超えて、全体論的な視座から生命を見つめ直し、生命を「動的な秩序」として定義します。と同時に、それを基にして、仕事のこと、生活のことに新しい気付きを与えてくれます。

 私が特に面白かったのは、清水先生が極力、西洋的な思考アプローチと形而下の分析を行いながら、かつ、東洋の叡智が過去から直観的にとらえていた生命観を慎重に取り込みつつ、新しい生命科学を打ち立てようとする論理過程です。また、清水先生は、生命という切り口から、「場」という概念に新しい光を与えます。私の場合は組織論が仕事に関連していますから、これを事業組織の「場」に敷衍(ふえん)して考えることはとても有意義でした。

 他方、福岡先生の本は新しい生命観を基に、昨今のダイエットブームやサプリメントブームの危うさを知ることができます。また、歴史上のさまざまな科学者たちを紹介してくれており、そうした群像物語から刺激をもらうこともできます。

生命は瞬時も休みなく「定規立て」をやり続けている

 今回はこの2冊にインスパイアされ、「生命・生きること」について私が再認識したことをまとめます。さて、下図を見てください。

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 みなさんは、子どものころ、手のひらに長い定規を立てて、それが倒れないように手のひらを前後左右に素早く動かすという遊びをやりませんでしたか? 別バージョンとして、足の甲に傘を立てたり、額(ひたい)にほうきを立てたりするのもあります。いずれにしても、このせわしなく立たせている状態が「動的平衡」です。

 定規には常に重力が働いているので、手のひらの動きを止めた途端、定規は倒れます。動的平衡が失われるからです。生命とは簡単に言えば、この動的平衡の状態です。私たちは、生きている間中ずっと、四六時中休みなしにこの「定規立て」を自律的にやっているのです! 何と不思議なことでしょうか。

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