コラム
» 2012年03月02日 08時00分 UPDATE

中村伊知哉のもういっぺんイってみな!:「国はアテにならない」、コンテンツは国を頼らず進もう (1/2)

「国がアテにならない」という出来事が3件重なった。国会や政府の話ではなく、著作権に関する司法の判決だ。

[中村伊知哉,@IT]

中村伊知哉(なかむら・いちや)氏のプロフィール:

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慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授。京都大学経済学部卒業。慶應義塾大学博士(政策・メディア)。デジタル教科書教材協議会副会長、 デジタルサイネージコンソーシアム理事長、NPO法人CANVAS副理事長、融合研究所代表理事などを兼務。内閣官房知的財産戦略本部、総務省、文部科学省、経済産業省などの委員を務める。1984年、ロックバンド「少年ナイフ」のディレクターを経て郵政省入省。通信・放送融合政策、インターネット政策などを担当。1988年MITメディアラボ客員教授。2002年スタンフォード日本センター研究所長を経て現職。

著書に『デジタル教科書革命』(ソフトバンククリエイティブ、共著)、『デジタルサイネージ戦略』(アスキー・メディアワークス、共著)、『デジタルサイネージ革命』(朝日新聞出版、共著)など。

中村伊知哉氏のWebサイト:http://www.ichiya.org/jpn/、Twitterアカウント:@ichiyanakamura


※編集部注:本記事は2012年2月23日に@IT「中村伊知哉のもういっぺんイってみな!」で掲載された記事を転載したものです。
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 民主党に政権が交代した後、首相を本部長とする「知財本部」のコンテンツ強化専門調査会を引き受けた。2010年春には最初の知財計画を取りまとめ、現在、3回目の見直し作業に入っている。「それまでのコンテンツ政策をいかに転換するか?」が私のテーマだった。

 財政支出を極力抑え、規制緩和や外交措置などで効果的に達成できる成長戦略を描くこと。それまでのコンテンツ政策は国内産業振興、著作権保護強化に重点が置かれていたが、その転換も図ること。そこに力を入れた。

 まず、前政権のコンテンツ政策がコンテンツ産業成長論(市場規模5兆円増など)に偏っていたものを「コンテンツ=文化+インフラ」ととらえ直すところからスタートした。

 知財計画骨子の冒頭に盛り込んだ次の文章に表れている。

 「技術力と並んで日本が強みを持つ文化力(表現力)は『クールジャパン』として世界から評価されているが、産業面でその潜在力を発揮しておらず、ソフトパワーを生かし切れていない。デジタル化・ネットワーク化の進展に伴うデジタルコンテンツの重要性の高まりも踏まえ、成長産業として国際展開を推進するとともに、他産業とも連携して波及効果を発揮していく。……これらを通じ、技術力(ものづくり力)と文化力(表現力)の総合力を活かす知財戦略を構成する」

 「コンテンツ=文化力」+「ものづくり=技術力」の「総合力」が日本の強みであるとするスタンスだ。これを政治主導で展開するよううながした。

 ポイントは3つある。

  • 新市場の開拓=短期施策=海外展開
  • 新分野の開拓=中期施策=ネット展開
  • 成長エンジン=長期施策=人材育成

 「海外」「デジタル・ネット」「人材」の3本柱だ。

 海外戦略としては、海外から利益が入る仕組みを構築する。海外展開ファンドの創設、国際共同製作の促進のための支援、アジア諸国における規制緩和を進める。

 デジタル化・ネットワーク化策としては、「コンテンツ特区」の創設、デジタルサイネージを始めとした新たなメディアの整備などを盛り込んだ。

 人材育成策としては、海外からも優秀な人材が集まる魅力的な「本場」を形成するため、「コンテンツ版COE(中核的大学)」の形成や小中学生に対するコンテンツ教育の実施を強調した。

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