なぜJR東日本は車両部門を強化しているのか杉山淳一の時事日想(2/5 ページ)

» 2012年03月02日 19時25分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

車両製造は外注が一般的

 バスや飛行機は、それぞれのメーカーが新機種を開発し、運行会社に売り込む。だから路線バスや観光バスは同じメーカーの車種が多く、運行会社によって車体色が違う程度の差しかない。

 鉄道車両も運行会社がメーカーから購入する方式だが、バスや飛行機とは違い、運行会社が外観デザインも含めた意匠や仕様を決定し、複数のメーカーに発注する。規模の大きな路線では大量に同型車両が必要になるし、すべての車両を同時に作れる規模の会社がないからだ。例えば、まもなく引退する100系新幹線電車の場合、メーカーは日本車両製造・川崎重工業・日立製作所・近畿車両・東急車輌製造などさまざまだ。

 海外のほとんどの鉄道でも車両は外注だ。車両製造の最大手はボンバルディア(カナダ)、アルストム(フランス)、シーメンス(ドイツ)で、世界の鉄道車両市場の半分を占める。この後に米国のGEトランスポーテーションとエレクトロ・モーティブ・ディーゼルが続くという。

 日本では日立製作所や川崎重工が大手とはいっても、世界の市場ではまだ小さい。それでも日立製作所は英国・韓国・ドバイ・シンガポールの鉄道に納入し、英国・インド・ブラジルに生産拠点を準備中だ。川崎重工は台湾の新幹線車両、シンガポールやニューヨークの地下鉄車両で実績を上げており、米国に生産拠点を構えている。

JR東日本は東急車輌製造を救ったのか

 鉄道業界は車両の外注化へ向かっている。そんな中で、なぜJR東日本は自社製造にこだわり、東急車輌製造まで手に入れて強化したいのか。日立製作所や川崎重工が世界へ視野を向けているというのに、これでは逆行ではないか。

 JR東日本のプレスリリース「東急車輌製造株式会社の鉄道車両製造事業の経営権取得について」(2011年10月27日)をまとめると、「東急車輌製造の開発設計力や特急車両の製造能力を高く評価し、車両製造事業をJR東日本の第4の柱とする」「国内市場、海外市場への積極的な展開」となる。東急車輌製造の技術と生産能力を高く評価したようだ。

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