なぜJR東日本は車両部門を強化しているのか杉山淳一の時事日想(1/5 ページ)

» 2012年03月02日 19時25分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。2008年より工学院大学情報学部情報デザイン学科非常勤講師。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP、誠Styleで「杉山淳一の +R Style」を連載している。


 鉄道車両の出自は大きく分けて2種類ある。鉄道会社が自社で製造する場合と、鉄道車両メーカーが作って納品する場合である。日本の鉄道の歴史をさかのぼると、初期は米国、英国の車両メーカーから購入した。車両の運行では保守点検が不可欠なので、保守点検用の工場が作られ、やがて車両の新製にも着手する。そのため国鉄は鉄道車両工場をいくつも持っていた。JR東日本が新津(新潟県)に車両工場を構えたのもそうした経緯による。

JR東日本新津車両製作所。1994年に操業開始。設立には東急車輌製造の技術協力があったという

 日本の近代化や戦時需要などで鉄道が発達すると、国鉄は自前の工場だけでは足りなくなり、民間の工場に委託し始めた。日立製作所や川崎重工の造船部門が鉄道車両事業を担った。民営鉄道は外注が多かったものの、規模の大きな鉄道会社は自前の車両製造工場を持ったり、民間の車両製造会社を買収して子会社化したりした。西武鉄道はかつて自社向けの車両を製造していた。近鉄には近畿車両という子会社があるし、東急電鉄は東急車輌製造を持っている。

 日本では「子会社」という形態を除くと、自社向けの車両を製造する会社はJR東日本だけである。これは世界的に見ても珍しい形態だ。しかもJR東日本の新津工場は相模鉄道や都営地下鉄、小田急電鉄向けの車両も作っている。JR東日本の新津工場も他社の車両を受注しているように、鉄道車両は外注が一般的だといえる。

新津車両製作所の敷地面積は約15万平方メートル。従業員数は約600人。年間250両の生産能力があるとのこと

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