原発を再利用したテーマパークに行ってきた松田雅央の時事日想(5/5 ページ)

» 2012年02月29日 08時01分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]
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 ブンダーラント・カルカーは世界で他に例を見ない珍しいプロジェクトであり、財政的に成功した点でも特筆に価する。残念なのは稼働を開始した原発は同タイプの再利用が不可能なこと。施設と機器が一度でも放射性物質にさらされれば数十年にわたり多額の費用をかけて解体作業を進めなければならないからだ。そういった意味で他原発がモデルケースとすることはできないが、「現在建設中で、まだ稼働していない原発」の参考とすることは大いに可能だ。

 脱原発の反対理由として、よく「地元経済に与える不利益」が取り上げられる。生まれるはずだった雇用機会が失われ、入るはずだった税金や交付金が泡と消えてしまうという主張である。確かにブンダーラント・カルカーは特別な事例だ。しかし原発がなくともアイデアと戦略次第で地元経済を活性化させる手法はあるということを、ブンダーラント・カルカーは身をもって証明している。

カルカー原発として建設されていた当時の写真(左、出典:ブンターラント・カルカーの資料)、テーマパークへ改装後の写真。アルプスの絵が描かれた冷却塔、テニスコート、サッカーグラウンド、小さなオフロードサーキットも見える(右、出典:ブンターラント・カルカーの資料)

ブンダーラント・カルカーの基本情報

年間来場者数(全施設) 50〜60万人
従業員数(冬季/繁忙期) 200人/500人
敷地総面積と、現在使用している割合 サッカーグラウンド80面分、3分の1
買収額(1995年) 約400万ユーロ
買収後の投資額 約5000万ユーロ
計画中の施設 屋内プール、屋内運動場、ウェルネス施設、エネルギーパーク、新しいイベントホール(6000平方メートル)
利用者の年齢層 若年層と高齢層が半々。アミューズメントパーク営業時期(3〜11月)は若年層の割合が増え、宿泊客は高齢層の割合が高い
(出典:ブンターラント・カルカーの資料)


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