MacBook AirユーザーとLet'snoteユーザーはどう違う?消費者理解コトハジメ(1/4 ページ)

» 2012年02月22日 08時00分 公開
[大久保惠司,Business Media 誠]
誠ブログ

 「ブランド」の語源が「焼き印を押すこと」であることは、広く知られています。焼き印はその牛が誰のものかを区別するために使われていました。マーケティングで言うブランドとは、自社の商品やサービスを、他社の商品やサービスと区別するためのあらゆる概念を指しています。ちなみに、ここで言うブランドは「ブランド品」という意味ではありません。

 経営学者フィリップ・コトラーは「マーケティングの技術はブランド構築の技術そのものである」と定義し、「もし、あなたが提供しているものがブランドでなければ、それはコモディティ※にしか過ぎない。そしてコモディティの世界では価格こそがすべてであり、低コストの生産者が唯一の勝者となる」と結んでいます。

※コモディティ……何の差別性も打ち出せない一般的な商品。

 また、ブランディング・コンサルタントのマーティー・ニューマイヤーは「ブランドとは、ある製品、サービス、企業に対して人が直感的に感じるもの」と定義し、「ブランドの内容は、企業が定義付けすることではなく、消費者が定義付けすること」と言っています。

 つまり企業にとって「ブランド」とは最重要なテーマであり、しかも「ブランド」のキャスティングボードは、消費者に委ねられているということ。当然、企業が考えている「思われたいこと」と消費者が「思っていること」にギャップが生じます。企業はそのギャップを埋めるため、さまざまなマーケティングの施策を打ち続けていくということになります。

ブランドからの消費者理解

 さて、ブランドイメージが消費者の心の中にあることは分かりました。それでは、人はなぜそのブランドを選ぶのでしょうか? 人の嗜好(しこう)は十人十色とはいえ、同じブランドを所有している人たちの間に、何らかの共通項はないのでしょうか? さらに、ブランドイメージがその人の心の中にあるのであれば、その人が選んでいるほかのカテゴリーのブランドにも、何らかの法則性があるかもしれません。

 そこで私は仮説を立てました。さまざまなブランドのユーザーを分析して、その人たちの心の動きを理解することができれば、その人たちに好んでもらえるブランドや商品を開発することができるのではないかと。

 つまり、所有しているブランド(商品)から消費者を理解しようというアプローチです。商品・ブランドの所有というファクト情報から、人の心の動き(感動)を探り出す。私はこれを「感動体験のリバースエンジニアリング」と呼んでいます。

MacBook AirユーザーとLet'snoteユーザーを比較する

 それでは試しに消費者分析ツール「ぺるそね」※を使ってMacBook AirユーザーとLet'snoteユーザーの違いを分析してみましょう。どちらもモバイルPCとして人気の商品です。一体どんな人が使っているのでしょうか。

※ぺるそね……約3万人の消費行動データをもとに、ターゲットとなる人々のライフスタイルを読み解けるナレッジベースサービス。比較したデータは2011年9月調査のもの、母数は2万9093人。

 「ぺるそね」データベースの中にMacBook Airユーザーは300人、Let'snoteユーザーは1014人存在しています。男女比はどちらも7:3で男性が多く、平均年齢は41.7歳(MacBook Air)と44.3歳(Let'snote)で、その差は2.6歳。平均既婚率はそれほど違いません。両ユーザーを比較すると、Let's noteユーザーは子どもがいる人が7%くらい多く、平均世帯年収では37万円ほど少なくなっています。とはいえ、基本的な属性は驚くほど似てます。

 「ぺるそね」の全サンプル(2万9093人)の集計結果と比較してみると、どちらも「新しく出た商品は実際に買って、いろいろ試してみる方だ」と「新商品の情報はまめにチェックしている」という傾向が強いようで、モノ好きでこだわりがあるタイプのようです。人に「先進的」と思われたい点は一致していますが、MacBook Airユーザーは加えて「刺激的」と思われたいと考えており、Let'snoteユーザーは「合理的」と思われたいと考えているようです。

 どちらも「デジタル家電」に関心が高い人たち。MacBook Airユーザーは「雑貨、インテリアショップによく行く」人が多く、「デザイン」への興味が高いようです。一方、Let'snoteユーザーは「家電量販店」によく行く人が多く、「ビジネス」への興味が高いと答えています。

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