ギリシャ支援で欧州債務問題は解決するのか?藤田正美の時事日想(2/2 ページ)

» 2012年02月20日 08時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]
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為替安で競争力を回復できない国々

 しかし、ギリシャやイタリアなど統一通貨ユーロを採用している国は、為替安によって競争力を回復させることはできない。これがユーロ圏の大きな矛盾だ。しかもユーロは、ドイツの強さに引っ張られて為替相場は高くなりがちである(ユーロ安に振れたのはギリシャなどの債務危機が表面化してからだ)。逆にドイツなどは、自国通貨マルクのころよりも為替相場が安くなりがち、競争力の劣る国がユーロの相場を押し下げてくれるからである。その結果、ドイツは輸出によって経済を成長させることができる。

 ユーロ圏が抱えるこの矛盾は、財政規律をいくら強めても解決する話ではない。最終的には、豊かな国から貧しい国への富の移転が必要だろうし、財政を統一することも必要になるだろう。主権をEUに委譲することによって、経済統合の大実験を完成させることしかないと思われるが、実際にそこに到達するには障害がいくつもあるし、それが可能かどうかも分からない。

 それにEUは日本と同じように、人口減少、高齢化という悩みを抱えている。出生率がまずまず高いのはフランスだけだ。ということは、人口減少による需要減、そしてデフレという日本がたどっている道をEUもたどる可能性があるということだ。

 日本の轍(てつ)を踏まないように、欧米の中央銀行は金融の超緩和策を続けている。ECB(欧州中央銀行も2011年にマリオ・ドラギ総裁に交代してから緩和路線にかじを切った)。これでデフレに陥るのを防ぐことができるかどうかは、誰にも分からない。

 世界銀行のリポートによれば、「域内の自由化によってサービス貿易を3倍に増やすことができる」という。また農業は国による保護や規制が強い分野であり、これも自由化によって経済成長を促進できると言われている。

 ただ、緊縮財政や規制緩和などの変革には、政治の強い意思が必要である。それは日本の政治を見ていても分かることだ。しかし国民に一時的とはいえ痛みを強いるような改革を進めることは、どこの国でも大変であることに違いない。フランスはこの4月に大統領選挙が行われるが、サルコジ現大統領は苦しい戦いを強いられている。ギリシャも総選挙が近付けば、政府が約束した緊縮策や改革が反故にされる可能性もある。

 株価が上昇したことで、世界的に楽観的なムードが高まっているが、欧州にかかった黒雲はそう容易に晴れまい。

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