改革推進者を育てるための4つの力(1/2 ページ)

» 2012年02月17日 08時00分 公開
[野町直弘,INSIGHT NOW!]
INSIGHT NOW!

著者プロフィール:野町直弘

アジルアソシエイツ社長。慶應義塾大学経済学部卒業後、大手自動車メーカーに就職。同社および外資系金融業にて調達・購買実務および、調達部門の立ち上げを経験。コンサルティング会社にて調達・購買、ロジスティック、BPR、SCMなどのプロジェクトを担当。ベンチャー系WebインテグレーターでCOOおよびB2Bチームの立ち上げを行う。その後独立しアジルアソシエイツを設立。


 坂口孝則氏は著書『思考停止ビジネス』の中で「人気のあるコンサルタントとはクライアントを叱ってくれる人だ。叱りつつ無理やりにでも会社の方向性を決めてくれる人が、実は人気がある。……研修でも、最も人気がある講師のウリは『受講者を叱ってくれることなのです』と聞かされた」と述べています。確かにその通りです。

 ただ、私自身がどうかというと「叱る」「命令する」ことは極めて下手です。むしろ私のコンサルタントとしてのスタイルは「できることから始めましょう」であり、できないことや何らかの制約があって実現できないことを、むしろ条件として受け入れるようなやり方をしています(だから人気がない……のかもしれませんが)。

 しかし、調達・購買部門が革新的であり、若手の社員がイキイキしている企業、つまり調達・購買改革力がある企業には、必ずと言っていいほど意識の高い改革推進者が存在しています。これから我々が目指していかなければならないのは、このような企業内の改革推進者をいかに『生み出し』『育てていく』かです。そのためには「叱る」「命令する」「提言する」だけでは難しいのです。

改革推進者を育てるための4つの力

 それではこのような改革推進者を『生み出し』、『育てる』ためには何が必要でしょうか。私は4つの力が必要だと考えています。その4つとは『意識(Awareness)』『手法(Method)』『インフラ(Infrastructure)』『実行力(Execution)』です。

 『意識(Awareness)』はまさに改革に対する意欲です。これは多くの企業の場合、すでに持っている方がどこかにいらっしゃいます。その改革推進者が組織内に埋もれてしまっていることも少なくありません。何らかの改革を始める場合、「あるべき像」と「ありたい像」を徹底的に討議し、共有する。「あるべき像」「ありたい像」の仮説をイメージするために多くの先進的な事例を共有する、また他社の改革推進者の声を聞かせるなど、意識の高いキーパーソンの発掘とともに高い意識の醸成をうながしていく必要があります。

 『手法(Method)』は理解していただけると思いますので詳細は割愛しますが、これは改革推進者に有益な道具を持たせることにつながります。プロジェクトの進め方やタスクの設計だけでなく、パワポ1枚のフォーマットも場合によっては有益な道具になります。もう1つ大切なことは『手法(Method)』は現場で使ってみてブラッシュアップさせることです。改革推進者はその時のノウハウを常に成長させることができる力をこれにより持つことができます。

 『インフラ(Infrastructure)』は主にIT技術などの活用になります。調達・購買改革だけではないですが、業務改革の基本は標準化です。標準化した業務を統制していくためにはIT技術は非常に有効です。特に調達・購買業務は社内外に多くのステイクホルダーが存在しています。これらの多くの関連者の情報共有や管理のためにはどうしてもITの力が必要なのです。

       1|2 次のページへ

Copyright (c) INSIGHT NOW! All Rights Reserved.