コラム
» 2012年02月16日 07時05分 UPDATE

相場英雄の時事日想:こんな見出しはダメ! 読者を惑わすミスリード (1/2)

新聞の記事タイトルを見て、疑問を感じたことはないだろうか。例えば2月初旬、新聞の顔ともいえる一面に“トンチンカンな見出し”が掲載されていた。今回の時事日想は、成長著しい韓国企業を軸に、メディアの実態に迫った。

[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

yd_aiba.jpg

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『偽装通貨』(東京書籍)、『偽計 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)、『震える牛』(小学館)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo


 2月初旬、筆者はある新聞の一面トップ記事を読んだ瞬間、口を開けてしまった。当コラムで大手メディアの経済報道に対してたびたび苦言を呈してきたが、その顕著な例が大新聞の新聞の顔ともいえる一面に載っていたからだ。今回は、成長著しい韓国企業を軸に、大手メディアの実態をみていく。

「追い上げ」ではなく「周回遅れ」

 2月3日付の朝日新聞朝刊は、一面トップで日本の電機大手の業績動向を伝えた。業績悪化が顕著な電機大手の具体的な数値を提示し、俯瞰(ふかん)して読者に伝える「業界まとめ記事」の体裁だった。

 東日本大震災の影響、加速度的に進行した円高、タイの洪水被害などが複合的に絡み合い、日本の産業界の屋台骨とも言うべき電機業界は総じて業績が低迷した。

 海外市場に目を向ければ、韓国や台湾、中国の新興企業が台頭し、日本メーカーのシェアを次々に奪っていったのは明白。記事自体に、筆者は違和感を持たなかった。ただ、冒頭に触れたように、口を開けてしまったのには理由がある。サブ見出しにこんな文字が載っていたからだ。

〈韓国勢の追い上げ〉

 紙面を手にした直後、思わず「おいおい」と突っ込みを入れてしまった。

 同紙だけではない。複数の民放テレビでも、日本の電機メーカーの業績低迷を伝える際、韓国勢の追い上げという文言を“枕詞”的に使用していたのだ。

 当該の記事を執筆した記者が「追い上げ」と見出しをつけたのか、あるいは同社の整理部記者があとからこれを追加したのかは分からないが、これは明らかに読者をミスリードしている。

 筆者は当欄とは別の連載コラムにて、数年前から日本の電機産業の凋落を伝えてきた(参照リンク)

 同紙報道に接したあと、日本の電機業界を長年カバーしてきた外資系証券会社のアナリストに聞いてみた。やはり筆者と同じ感想を持っていた。

 「トンチンカン極まりない。韓国勢の追い上げではなく、日本勢の周回遅れだ。業績面だけをとってみれば、周回遅れは既に4周、あるいはそれ以上」

 このアナリストは、こんな分かりやすい例を提示してくれた。

 「韓国サムスン電子の年間営業利益は日本円換算で約1兆1000億円。足元の円高ということを勘案しても、日本のメーカーとは大きな隔たりがある。箱根駅伝に例えれば、サムスンが東洋大の柏原選手で、日本勢は予選落ちのイメージ」

 本稿は精緻な業界分析を本来の目的としていないので、簡単に記しておく。サムスン電子1社の利益は、パナソニックや東芝といった大手電機・電気メーカー9社の利益を足した水準だ。これでも「追い上げ」という見出しは適切だろうか。

       1|2 次のページへ

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

Loading

注目のテーマ