なぜ人は商店街を訪れるのか? “高架下開発”の2つのアプローチ郷好文の“うふふ”マーケティング(1/3 ページ)

» 2012年02月16日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

マーケティング・リサーチ、新規事業の開発、海外駐在を経て、1999年〜2008年までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略など多数のプロジェクトに参画。2009年9月、株式会社ことばを設立。12月、異能のコンサルティング集団アンサー・コンサルティングLLPの設立とともに参画。コンサルタント・エッセイストの仕事に加えて、クリエイター支援・創作品販売の「utte(うって)」事業、ギャラリー&スペース「アートマルシェ神田」の運営に携わる。著書に『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など、印刷業界誌『プリバリ[印]』で「マーケティング価値校」を連載中。中小企業診断士。ブログ「cotoba


 東京は巨大な商業空間。NewがあればOldも、EdgeもあればDeepも、いいね!もあればイマイチもある。私の仕事場である神田近くにも「ディープに興味深い」空間がある。

 それは2010年12月にオープンした東京東部の“ものづくりの街”、「2k540 AKI-OKA ARTISAN」。JR山手線・京浜東北線の御徒町駅と秋葉原駅の真ん中、100メートルを越えるウナギの寝床状の高架下に、ジュエリー・アクセサリー、インテリア・陶器、革や帽子やメガネ、カフェなど40数店が軒を並べる。

 南の秋葉原方面から中に入ってみよう。木製雑貨ブランド店「ハコア」には、iPhoneケースやキーボード、テーブルグッズなど木製雑貨がいっぱい。革製品店「ボルサ」には“皮革顔”が凛とする小物たちが並び、帽子好きを釘付けにする「イフティアート」、デザイナー川崎和男氏の自由奔放なメガネフレームが印象的な「マスナガ イチキューゼロゴ」、お好みで傘をカスタマイズできる「トウキョウ ノーブル」などが来客を魅了する。

 それぞれが代官山にあってもおかしくない、おしゃれなお店、価格はやや高めなので財布は分厚くしていらっしゃい。疲れた時はやなか珈琲店でほっと一息を。

「イフティアート」(左)、「トウキョウ ノーブル」(右)

 北の御徒町へと抜ける終端付近には、樹脂製品のカスタマイズショップ「トウメイ」がある。店の横にはガチャガチャがあり、アクリル板の象や馬、ダチョウやサイなどが引けるようだ。どこかおもちゃの香りがするのが、アキバっぽい。

 2k540は「東京駅から2k540(=2540メートル)付近」という鉄道用語に由来、AKI-OKAはその名前の通り両駅の中間地帯を表し、ARTISAN(アルチザン)は職人という意味である。

 革から木、土や布、金属など工芸職人の町だったかつての御徒町を、コンテンポラリーなものづくりでくくるのが施設全体のコンセプト。開発・運営はJR東日本都市開発。同社ではエキュート赤羽、味の散歩道(東京駅)など駅ナカや高架下も運営している。

 歩き回ると、良いモノがいっぱい見つかる。しかし……告白しよう。何度も行ったのに、私はまだここで何も買ったことがない。あか抜けている。個性たっぷりの店がある。でも、「良いモノはあるけど……」と、「……」が付いてしまうのだ。

 「なぜだろう?」と考えた時、ショッピングモール開発の視点が見えてきた。それを考えてみたい。

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