今年日本で注目の「第4のエコカー」、クリーンディーゼルとは?神尾寿の時事日想(2/3 ページ)

» 2012年02月15日 09時14分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]

 そして、2012年に日本でも注目されそうな「第4のエコカー」がある。それがクリーンディーゼルである。

ディーゼルのイメージ

 欧州の自動車事情に詳しい人にとっては「何を今さら」な話であるが、日本では石原都知事が「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例」(通称「環境確保条例」。2000年に制定、参照リンク)を実現するために行ったパフォーマンスによって、ディーゼルは長らく「健康に悪い=非エコ」というイメージが定着してしまった。環境確保条例そのものは東京近県の空気をきれいにするという効果は確かにあったのだが、その後10年でディーゼルエンジンの技術が飛躍的に向上して主要なエコカー技術になったにも関わらず、この時の「汚いディーゼルのイメージ」が、日本市場におけるクリーンディーゼル普及の妨げになってしまったのだ。

高効率で高い動力性能。割安な軽油も魅力

マツダの次世代クリーンディーゼルエンジン「SKYACTIV-D」

 エコ技術という視点で見ると、現在のクリーンディーゼル技術はハイブリッドカーや高効率ガソリンエンジンに並ぶ魅力を備えている。

 まず、ディーゼルエンジンはもともと効率性が高く、Co2排出量が少なくて、燃費もガソリン車に比べて2〜3割ほど良い。粒子状物質(PM)や窒素酸化物(NOx)など大気汚染物質の排出も、コモンレールディーゼル技術(※)の進化と排出ガス浄化システムの高度化によって飛躍的に少なくなった。現在のクリーンディーゼル車は欧州の厳しい環境基準「ユーロ6」はもちろん、かつて"事実上のディーゼル車締め出し規制"とまで言われた日本のポスト新長期規制もクリアする性能を実現している。今あるクリーンディーゼルは、まったく「汚くない」のである。

 さらにクリーンディーゼル車には、環境性能以外にも、特筆すべきメリットがある。それは動力性能の高さと、燃料費の安さだ。

 ディーゼルエンジンはトルクが大きく、小排気量でも大排気量のガソリンエンジンのような力強い加速と乗りやすさを実現できる。またハイブリッドカーのように異なる2つの動力源を切り替えて使うわけではないので、従来のガソリンエンジンと同様に、運転中の乗り味に違和感を感じることもない。これが“クルマの運転を楽しむ文化”が根付いている欧州において、クリーンディーゼルの支持が厚い理由の一つだ。

 また、ディーゼルは元来の燃費の良さに加えて、日本では燃料費が安く抑えられるというメリットもある。周知のとおり日本では、ディーゼルエンジンが使う軽油は、トラックなど産業用に主に使われるということから、政策的にガソリンよりも安い税金が設定されていた。今でもガソリンより軽油の方がリッターあたりの単価が安い。クリーンディーゼルは燃費がよいだけでなく、燃料も安いのだ。

※コモンレールディーゼルとは?

コンピューターによる電子制御と電磁式噴射ポンプにより、高圧燃料を燃焼筒内に直接噴射。ディーゼル燃料の燃焼を細かく制御することで、燃費向上と汚染物質の抑制を実現する技術。ドイツのボッシュ社が1997年に乗用車用コモンレールディーゼルシステムの実用化をし、欧州においてディーゼル車がエコカーとして普及する道を築いた。


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