エキナカ自販機の売上が、伸びている理由(前編)仕事をしたら“消費者”が見えてきた(1/6 ページ)

» 2012年02月15日 17時35分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]
2006年以降、自販機の台数が減少傾向にある(出典:矢野経済研究所)

 自販機業界が苦しんでいる。矢野経済研究所によると、自販機市場の規模は2006年以降右肩下がり。低迷を続ける要因として「市場構成比の4割を占める飲料自販機の設置ロケーションが飽和状態にあることに加え、たばこ自販機や酒類自販機も年々台数を減らしていることが挙げられる」(矢野経済研究所)という。

 業界に厳しい風が吹きつける中、売り上げを伸ばしている会社がある。そのひとつがJR東日本子会社の「JR東日本ウォータービジネス」だ。ゼロから起業した会社ではなく、利益が出ていたJR東日本グループの事業を引き継いで、2006年に設立した。以後、売り上げは約1.5倍に拡大している。

 業界が苦しんでいる中、なぜ売り上げを伸ばすことができたのか。そのナゾを解き明かすべく営業本部長の笹川俊成氏に迫った。聞き手は、Business Media 誠編集部の土肥義則。

自販機のロケーションを見直す

東日本ウォータービジネス営業本部長の笹川俊成氏

土肥:エキナカ自販機での売り上げが好調ですね。会社が創業したのは2006年。その後、自販機の台数はほぼ横ばいなのに、5年間で売り上げは1.5倍(187億円→260億円)。自販機1台当たりの売り上げが1.5倍になった計算になりますが、その要因はどこにあるのでしょうか?

笹川:自販機の価値をどのようにすれば高められるのか、ということに力を入れてきました。と、同時に私たちは消費者調査を頻繁に行ってきました。

 例えば「なぜあなたは自販機を利用しているのですか?」といった質問をすると、2つの答えが突出して多かった。1つは「スピーディーに買えるから」、もう1つは「買いたい時に近くにあるから」。この結果というのは、コンビニやスーパーにはない、「自販機が持つ強み」だと思っています。

 会社としてはその強みを生かして、売り上げを伸ばしていかなければいけません。「スピーディーに買えるから」という理由については、自販機をSuica対応にすることでより早く買えるようにしました。また「買いたい時に近くにあるから」については、ロケーションを見直しました。

土肥:ロケーションを見直した? つまりエキナカにある自販機の設置場所を変えたということですか?

笹川:はい。従来、駅のホームに設置されている自販機は、空いているスペースにまとめて置いたり、隅っこのほうに置いたりしていました。もちろん電車を利用されるお客さまにとって、邪魔になる場所には置けません。ただ自販機は「買いたいときに、近くに」なければいけません。そこで全社員が駅に出向き、駅のホームやコンコースで人がどのように流れているのか、といったことを徹底的に調査しました。

土肥:その結果、どのようにロケーションを変えたのでしょうか?

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