アップルVS. グーグル、“ハード+ソフト”の戦いの行方(1/2 ページ)

» 2012年02月14日 08時00分 公開
[石塚しのぶ,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:石塚しのぶ

ダイナ・サーチ、インク代表取締役。1972年南カリフォルニア大学修士課程卒業。米国企業で職歴を積んだ後、1982年にダイナ・サーチ、インクを設立。以来、ロサンゼルスを拠点に、日米間ビジネスのコンサルティング業に従事している。著書に「『顧客』の時代がやってきた!『売れる仕組み』に革命が起きる(インプレス・コミュニケーションズ)」「ザッポスの奇跡 改訂版(廣済堂)」がある。


 「グーグルがホーム・エンターテインメント機器を展開するらしい……」との報道がされて、米国ではちょっとした話題になっている。

 クラウド型ストレージ・サービス「ドライブ(Drive)」の近々の導入が報道されたのがつい先日。最近のグーグルはサービス/事業拡張に忙しい。いや、グーグルという会社はそもそも「新しいアイデアを次々と試験運転しては、定着しないものをどんどん切り捨てていく」というベータ的メンタリティの会社ではあったのだが……。しかし近年では、それがオリジナルな「ネット広告ビジネス」のモデルからの離脱を示唆するものであるからか、特に目立ってみえる。

 「2011年8月に発表されたグーグルによるモトローラの買収を、どうやら近日中に米司法省が正式に認可するらしい」という報道があったのが2月10日。発表当時、「グーグルがついに(携帯/スマートフォンの)『ものづくり』に進出!」ということで大いに業界はわいた。

 そして今度は、グーグル・ブランドのホーム・エンターテインメント機器の開発/販売に乗り出すという。今までAndroidというOSの開発に徹し、スマートフォン、タブレット、あるいはテレビ機器メーカーにそれを「使わせる」という形をとってきたが、ここにきて「ソフト→ハード」、いや「ソフト+ハード」への大胆な飛躍に乗り出すというわけだ。

 ご存じのように、グーグルやFacebookのようにいわば「システム開発」に徹するテック企業の強みはその利ざやの高さにある。「ものづくり」に手を出すと、当然のごとく利ざやは犠牲にされるので、グーグルのこの動きに対して警告を発しているアナリストも少なくはない。

 「ソフト」と「ハード」をパッケージ化したサービスの展開でビジネス・モデルの大転換を試み、飛躍的な成功を収めた企業といえばあのアップルである。アップルはもともとはPCの開発・製造を手がける「ハード」の会社であったが、コンシューマー・エンターテインメント・デバイスであるiPod(ハード)を導入した際に、それにあわせてデジタル・エンターテインメント・マネジメント・システムであるiTunes(ソフト)を世に紹介し、また流通の仕組みであるiTunesストアまで作ってしまったことで、生活者のデジタル・エンターテインメント・ライフを一手に引き受けるソリューション・プロバイダーとしての地位を固いものとした。

 そして、「iPodというハード」を管理するには「iTunesというソフト」が必要という排他的構造を作り出すことで、供給から消費までのプロセスをコントロールしたことが、アップルのさらなる成功につながったことは言うまでもない。さらに、今日ではiTunesは、iPodだけではなくiPhoneやiPadなど他のデバイスのマネジメント・ソフトとしても確立されている。

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